墓 参
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 セフィロス
 

 

 

 

 

「セ、セフィロス……!?」

 と、戸惑うヴィンセントの声。だが、そんなものは無視してやった。

「おい、クソババァ! 思念になってんのか何なのか知らねーが、そこに居んのか!?」

「セ、セフィロスッ! や、やめたまえ!」

「居るんなら、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ! いいか!どんな大義名分があろうと、テメェは最低最悪の罪人だ! オレ様のことも然り、こいつにしたこともな!」

「セフィロス……!」

「オレのことはもういい。どの女の腹から生まれようと、オレ様はオレ様だ! だがな、ヴィンセントはそうじゃねぇだろッ!」

 虚空に向かって怒鳴り散らすオレは、端から見たらキチガイみたいなもんだろう。だが口をついて流れる言葉は止まらなかった。

 オレの激昂に呼応するように空気がビィーンと震えた。

「宝条にこいつが殺されかけるような事態をどうして招いた!? この男の性格を知っていれば、貴様らの人体実験を止めようと命を掛けることくらい想像がついたはずだ!」

「セフィロス…… もう……もういいんだ! それは私が勝手に……」

「おまえは黙っていろ!」

 そう叫んだオレの声はよほどキツイ響きがあったのだろう。ヴィンセントがビクッと身を震わせ、息を飲んだ。

 ……オレはいったい何をこんなに激しているんだ。ただヴィンセントに付き合ってこの場所に来ただけのつもりだったのに。

 ヴィンセントが愛おしげに『ルクレツィア』に語りかけるのが不快だった。そして謝罪の言葉を口にするのが……

 そう、ヴィンセントが恨み言を口にしないのなら、代わりにオレが言ってやる!という気分だったのだ。

 実体はないが、確実に残留思念を感じられる。

 ならばこそ『ルクレツィア』という女に、ヴィンセントの苦悩を思い知らせてやりたかった。

 

 

 

 

 

 

「女! 貴様がカオスをヴィンセントに封じ込めたのは、こいつの命を永らえさせるための非常措置だと言うのだろう!? だがな、そのおかげでヴィンセントは常人と異なる生を歩まざるを得ない。年も取らないし、いつその命が潰えるのかすらわからない。それがこの男にとって、どれほど残酷なことか貴様は考えたことがあるのか!?」

「セフィロス……」

「死ぬよりも永久に生き続けることのほうが、遙かにつらいのだと想像すらしなかったのかッ!」

「セ、セフィロス……もう……もう……」

 低い嗚咽と共に、ガタガタと震える指が、オレの二の腕にからみついた。

「所詮、テメェは三流科学者。人の気持ちを推察することさえできない、くだらん女だ。……だがな、安心しろ」

 腕にヴィンセントをとりつかせたまま、オレは言葉を続けた。

「貴様の作ったオレ様も、そうそう死ねない身体だ。もちろん、オレの思念体連中もな。おかげさまで、こいつを一人きりにさせることはなさそうだ。そこだけは不幸中の幸いってヤツだな」

「セフィロス……」

「おまえに怒鳴ってるわけじゃないだろ! べそべそ泣くな、男が!」

 相変わらず涙腺のもろいヴィンセントを、そう言って叱りつけた。

「そうだ、それから……忘れるところだった」

「え……?」

「おい、クソ女科学者。言っておくがDGん時の手助けに礼は言わねーぞ。よけいなことしくさって、オレ様ひとりでも十分コイツを守れたんだ! クソ忌々しい!」

 オレの言いぐさに、ヴィンセントはさらに困惑しきった表情になる。

「セ、セフィロス……そんな……ルクレツィアは……」

「あー、胸くそ悪ィ。行くぞ、ヴィンセント!どうせまた明日も来るんだろ!」

「え、あ……ああ」

「じゃあな、クソババァ! 地獄の底で後悔しろ」

「セ、セフィロスッ! あ、ル、ルクレツィア……あの……」

「いいから、さっさと来いッ!」

 ヤツの荷物を拾い、細い手首をぐいと引っ張る。当然、ヴィンセントは慣性の法則に従って、よろよろとオレの後ろについて出たのであった……