〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<51>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

「それはダメだ、カダ。ここは病院なんだし、付き添い用の設備もない」

 きっぱりとヤズーはそう言いきった。

「だったら、ホテルから通うもん」

「ひとりで食事をしたり、眠ったりできないだろう? 返って心配でたまらなくなる」

「もぉ〜! どうしてそうやって僕のこと子供扱いすんの〜!」

 カダージュはぷくっとばかりにふくれたが、その様子を見れば十分『子供』だ。

「とにかく、カダだけ残るなんてダメだ。ヴィンセント、ちゃんとカダも連れて帰って」

 やや強い口調でそういうヤズー。ヴィンセントはやや思案顔であったが、傍らに控えていた医師の助手らしき青年に言葉を掛けた。

「あの……この患者の家族のものなのだが…… 十分療養しなければならないのはわかっている。だが、特に急変などの心配はあるのだろうか?」

「いえ。頭部のCTスキャンも済んでいますし、背中の裂傷も縫合済みです。痛み止めの点滴も、明日には外せるでしょう。ただ、決して浅い傷ではないので、可能ならば一ケ月ほどは、ベッドで休んでいていただきたい」

「なるほど…… では、とにかく約一月、寝台で休養するようにすれば、問題はないと……そう解釈してよいのだろうか」

「そういうことです。ですが、たいていの方は退院してしまうと、無理に動いてしまわれます。完治する前に無理をすると、痛みが慢性化する可能性もあります。特に背中の傷ですが……」

 年若い医師見習いは、丁寧にカルテを手繰ってそう答えた。ヴィンセントはしっかりと頷くと、皆に了承を求めるべく、口を開いた。

「聞いての通りだ。後のこともある…… 点滴の外れる二日後……医師の了解をとって、皆で家に帰ろう。ヤズーはこれから一ヶ月、我が家で安静にして傷を治してもらいたい」

 ……これでどうだろうか?

 というように、俺、セフィロスの順に顔を見る。

「ちょっ……ちょっと待ってよ、ヴィンセント。俺に家事の手伝いもせずに、ただ寝てろっての?」

「ヤズー……当然だろう?」

「それじゃ、ヴィンセントの負担が増えるだけじゃない! それならセフィロスのいうように後から帰るよ。何もみんな揃って戻らなくても……」

「……私が……皆で一緒に帰りたいんだ。だれひとり欠けることなく……承服してほしい、ヤズー」

 ヴィンセントは絶対に譲らないというように、ヤズーの瞳をじっと見つめた。俺の最愛の人でありながら、こういう時のヴィンセントは本当に強いと思う。

 

 

 

 

 

 

「ヴィンセントの気持ちは嬉しいけど…… でも……」

「まぁまぁ、ここは女神のいうとおりにしてやっておくれよ、ヤズー」

 無遠慮に会話に割り込んできたのは、我が家の住人どころか完全に無関係のジェネシスだった。

「ジェ、ジェネシス……?」

「俺が女神の手伝いをするよ。荷物持ちや食事の支度……洗濯でもなんでもね」

「そんな……君の手を煩わせるような真似は……」

 恐縮して止めに入るヴィンセント。だが、ジェネシスはここぞとばかりに言葉を重ねた。

「いいじゃないか。チョコボっ子は仕事があるわけだし、セフィロスは家のことには役に立たないだろう? それに、この前は怪我をした俺の面倒を見てもらったんだから、今度は君たちの役に立ちたいんだ」

「あの、アンタね、なんかさわやかに言ってくれてますがね、コレ。ヴィンセントの手伝いってね。アンタ、元ソルジャークラス1stでしょ?一般兵の経験もまともにない人でしょ? そんなヤツに家のことなんてできるかよ! かえってヴィンセントの足手まといですゥゥゥゥ!」

「……クラウド……そんな意地の悪い物言いをするものではない。それよりも彼の心遣いが嬉しいだろう?」

 ヴィンセントは、静かにそう言った。

 いえね、全然嬉しくありませんから、俺的には。

「言っておくけどね、チョコボっ子。そりゃあ、ヴィンセントにはかなわないだろうけど、俺だってそこそこ料理はするんだぞ。洗濯するのも好きだしな」

「ほぉ〜。初耳ですな、コレ」

 とヤマダー口調で切り返してやった。

「料理や洗濯って、『科学実験』に近いんだよ。だから案外面白いんだ。それに、家事っていったって、そういうことばかりじゃないだろう? 買い出しや荷物持ちなんかのほうが、ヴィンセントにとっては大変なんじゃないか?」

「だが……君だって仕事もあるのに……」

 と、ヴィンセント。

「ほらァ。俺の仕事は時間の拘束がないからね。間に合いさえすればいいんだよ。そんなことより、君はここに居る皆でコスタ・デル・ソルに帰りたいんだろう?」

 とジェネシスに訊ね返され、それには素直にコクンと頷くのであった。

「じゃあ、すまないけど、頼める? ジェネシス」

 と言ったのはヤズーだった。

「もちろん、俺のほうから言い出したことなんだから、ヤズー。女神もそれでいいかい?」

「あ、ありがとう…… 本当に…… 私のワガママですまない……」

 俺は大きくため息を吐き出した。

 このシチュエーションでさらなる異議を唱えたら、俺はただの人でなしになってしまう。ヴィンセントの、皆で揃ってあの家に帰りたいという気持ちもよくわかるし。

 ちらりとセフィロスを見るが、御見舞いの菓子を黙って食っているだけだ。この人は興味のないことにはまるきり無関心なのである。

 挙げ句の果てに、『ちょっと出てくる』とだけ言い残し、さっさと病室を出て行ってしまったのだ。

「あーもぉ、わかったよ!そんじゃ、ヤズーの点滴が外れたら、みんなで帰るってことでね! あー、言っておきますけどね、ジェネシス。食費はね、入れてもらいますからね、コレ」

「ク、クラウド……! どうして、おまえはそういう……」

「まぁまぁ、女神。もちろん、チョコボっ子。しばらくの間よろしく頼むよ」

 くったくなく手を差し出され、俺は洗濯していないパンツをつまむように、ちょびっとだけタッチしてやった。