〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<50>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

「ヤズー…… ヤズー!」

 彼の姿が視界に入ると、ヴィンセントはタッと走り出した。俺も慌てて後を追う。

 神羅側の計らいだろう。

 南向きの綺麗な個室で、ヤズーは点滴につながれていた。

「ヴィンセント……? ああ、よかった! 治ったんだね!」

 ヤズーは、開口一番、駆け寄ってきたヴィンセントを見てそう言った。

「それにまぁ、ぞろぞろと。わざわざ御見舞いに来てくれたの。ありがとうねェ、セフィロス」

「……おい、なんでオレ様だけ名指しなんだ、ケンカ売ってんのか、イロケムシ」

 途端に剣呑な雰囲気になるふたり。

「ヤズー……! 具合はどうだろうか? ああ、可哀想に、こんな……」

 ヴィンセントはすぐさま彼の傍らに寄ると、やや大げさに包帯を巻いた手を取った。末の弟カダージュは、ずっとヤズーについていたので今は落ち着いている。

「大丈夫だったら、ヴィンセント。お医者さんが少し大げさなだけだよ」

「傷跡が残らないように、きちんと治さなければ…… ああ、無理に起き上がる必要はない。何か用があるのなら、私が……」

「うふふ、違うよ。貴方の顔をよく見たいだけ。……俺の方こそホッとしたよ。ちゃんと、目、見えてるんだよね?」

 ヤズーがささやいた。まだあまり大きな声は出せないのかもしれない。ヴィンセントといいムードになられるのはヤなんだけど、まさか怪我人相手に文句を言うわけにはいかないだろう。

「ああ、ちゃんと見えている。皆のおかげだ。……だが、おまえが、こんなひどい目に……」

「あ〜あ、ちょっとホラァ、泣かないでヴィンセント。大したことはないんだからさ。怪我したのだって、俺自身が油断していたせいなんだよ」

「そ、そんなことはない…… そんな…… すまない…… 私のせいで……」

「あーあ、困ったなぁ。ほら、ジェネシス。落ち着かせてあげて」

「おい、コルアァァ! なんで、このシチュエーションでその役目をジェネシスに振るんだよ!」

 俺はザシャッと音を立てて、ふたりの間に割り込んだ。

「あっはははは、そうかァ、ごめんよ、兄さん。でもさ、言っておいたでしょ。ヴィンセント連れてくるのは、せめてこの管やら頭の包帯がとれてからにしてって」

 ヤズーは、固定されていない方の腕で、点滴の管を持ち上げながら作り声で非難した。

「だってェ、仕方ないじゃん。どうしても行くって言ってきかないんだもん」

「まったくだ。今朝、目の包帯を取ったばかりだってのによォ」

 セフィロスが加勢するようにそういうと、ヤズーは綺麗な眉をつり上げた。

「今朝、包帯が取れたばかりですって? もう、ヴィンセント! 無茶したらダメじゃない。俺の怪我は時間が経てば勝手に治るんだよ。あなたの場合はすごくデリケートな部分でしょう? 兄さんもセフィロスも側についていながら何してるのさ!」

「違う……違うんだ、ヤズー。彼らは悪くない。私がどうしても病院に行くとダダをこねたんだ。おまえの様子が心配で……ちゃんと姿を見なければ……もう、不安で不安で、ジッとしていられなくなって」

「……ヴィンセント…… ああ、もう、あなたにそんなふうに言われちゃうとねぇ。もうどんな顔していいのかわからなくなっちゃうよ。気持ちはすごく嬉しいよ、ヴィンセント」

 さすがのヤズーも、ヴィンセントに苦言を呈するのは難しいのだろう。しまいにはやれやれといった調子になり、俺たちにはそれ以上文句は言わなかった。

 

 

 

 

 

 

「で、イロケムシ。おまえ、いつ出られるんだ? オレはさっさとコスタ・デル・ソルに帰りてーんだよ」

 クソ偉そうに言い放ったのは、もちろん我が家の英雄だ。

「セ、セフィロス! そんな……ヤズーを困らせるような言い方は……」

「そんなら、セフィ、ひとりで帰ればいいじゃん」

「ク、クラウド……!」

 極当然の発言をした俺を慌てて止めるヴィンセント。

「なんだと、このクソガキ! わざわざミッドガルくんだりまで付き合ってやって、その言いぐさか!」

「ぎゃあ! 痛いッ! 放してよッ! セフィのバカッ!」

 俺の首根っこを締め付け、ぐりぐりとげんこつをかますセフィロス。

「セフィロス……! ほら、クラウドもよしなさい……病室で……」

「だって、セフィが……」

「オレはただ質問しているだけだろ」

「セフィロス。相変わらず言葉が足りないな、おまえは。そうだな、俺の見立てだと、普通なら二週間くらいは横になっていた方がいいと思うね。どうだろう、ヤズー」

 ジェネシスがごく自然にそう訊ねた。

「ああ……うん、そうねェ、お医者さんはそう言っていたけどね」

「そうか、よし。それじゃあ、おまえは二週間経ったら勝手に帰ってこい。ああ、二ヶ月後でもいいがな。オレたちは先にコスタ・デル・ソルに戻ってる」

「冷たいなぁ、セフィロス」

 セフィのひどい物言いにも、くすくす笑いながら受け答えするヤズー。なんつーか、図太い者同士の会話だ。 

「そんな……ヤズーひとりを置いてなど……」

「そんなら僕がここでヤズーについてる!」

 末っ子のカダージュがぴょんと跳んで手を挙げたが、それは即座に当の本人に却下された。