〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<49>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

「はい、目をゆっくりと開けてみて…… 最初はかすんでいても驚かないでください。すぐに元通りに見えるようになりますからね」

 年若い医者がヴィンセントの瞳の包帯に、そっとはさみを入れる。

 ここは、神羅直営のホテル。俺たちは三者会談終了と同時に、こちらのホテルへ移ったのだった。

 

 ずっと開発を続けていた解毒剤…… 声を戻す方はすぐに効果が現れたが、点眼薬のテストには時間がかかった。昨夜ようやくその試作品が完成し、動物実験を終えた後、ヴィンセントに施されたのである。

 それから一晩経った今朝、いよいよ彼の目の包帯を、取り外すことになったのだ。

 入院中のヤズーとルーファウスはともかく、それ以外の連中……もちろん、俺ことクラウドを始め、我が家の者たち、おまけのジェネシス、そしてレノ他タークスの者までがヴィンセントを取り囲んでいた。

 かえって本人の緊張を強めることになると、恋人である俺だけがついていたいと主張したのだが、その意見はあっさりと却下されたのだ。

 

 太陽の光が目に染みるのか、ヴィンセントは少しつらそうに目頭を押さえた。

「ヴィンセント、無理しな……」

「女神、痛むのかい? 少しずつ慣らしていけばいいんだよ。無理に開ける必要はない。君の美しい瞳が、光を取り戻せなくなったら、世界の損失だ……!」

 苦しそうなヴィンセントを止めようとした俺が、なぜかお邪魔虫に遮られた。……っていうか、この人にそんな権利はないと想うんですがね!しかもしっかりとヴィンセントの手を、両手で握りしめている!

「……い、いや……大丈夫だ…… 少し……まぶしくて」

「おい、コルアァァ! カーテン引けや!」

 俺はレノに言った。ヤツは「エラソーに」だのと、ブツブツ言いながらも、遮光カーテンを引いてくれた。夜間用のものではないから、普通に日の光は通すが、まぶしいほどではなくなったはずだ。

「ヴィンセント、カーテン引いたから。もう大丈夫だよ」   

 ジェネシスから彼の手を取り返し、宥めるように撫でてやった。

 ヴィンセントはコクンと頷くと、慎重に……慎重に目を開いた。何度か瞬きを繰り返した後、

「ああ……皆、側に着いていてくれたのだな…… 本当にありがとう……!」

 と、しっかりとした口調でそう言ってくれた。一番側にいた俺の顔をじっと見て、それからジェネシスに視線を移し、後ろの方でどうでもよさそうに突っ立っていた、セフィロスを見つめた。

 ……やや、セフィを眺めている時間が長いんじゃないかと、文句を言いたくなったころ、ヴィンセントは目線を元に戻したのであった。

 

 

 

 

 

 

「あぁ、疲れた! おい、タークス、さっさとオレ様たちをコスタ・デル・ソルに送れ!」

 クソ偉そうにセフィロスが言う。

「ちょっと、セフィってば! ヴィンセントは今日、ようやく包帯がとれたばっかなんだぞ!」

「そーだそーだ! それにヤズーはまだ病院なんだからッ!」

 俺&カダージュの順番で、傍若無人の英雄に文句を付ける。

「ああ、そういや、ひとり足りねーと思ったが、イロケムシだったか。まぁ、いいんじゃねーのか。小姑ひとりくらいいなくても」

「セフィ!」

「セフィロスッ!」

「ガキふたりで輪唱するな。ケッ」

 どうでも良さそうに言い放つセフィロス。ったくこの人のこういうところは昔から全然変わっていない。

「クラウド…… 私はヤズーのところへ行きたい……! それにルーファウス神羅のことも心配だ。是非、これから病院へ……」

 まだ安静にということで、椅子に座らされているヴィンセントが、腰を浮かせて訴えてきた。

「ちょっと……ちょっと待ってよ、ヴィンセント。包帯取ったの、ついさっきなんだよ? まだ足下だっておぼつかないでしょ?」

 今にも動き出しそうなヴィンセントを、俺は慌てて止めた。

「もう……もう、大丈夫だ、クラウド。ちゃんと見えるし……」

「女神…… 君は本当に、君の信者を困らせてくれるねェ。病院なんだから、当然病人だっているんだよ? 目のことだけではなく、君はまだ本調子ではないだろう?」

 ジェネシスは、まだ舞台役者の気が抜けないのか、やや大げさな手振りを交えて説得する。

「で、でも…… あの…… 大丈夫……大丈夫だ。体調が悪いわけではないし…… それより、ヤズーの容態を確認できなければ……よくないことばかり考えてしまって……かえって不安で……」

 泣き出しそうな面持ちで、言葉を続けるヴィンセント。

 そう、物言いはやわらかく控えめであっても、彼はかなり頑固者なのだ。

「チッ……仕方ねェなァ。おい、赤毛、さっさと車を出せ」

「おい、ちょっと、セフィ!」

「セフィロス、いくら何でも今日でなくてもいいだろう!?」

「こいつはな、すぐにべそべそしやがるくせに頑固なんだ。連れていかなきゃ、メシも食わねェで、部屋に閉じこもるぞ」

 煩わしげに悪態を吐きつつ、セフィロスが言った。

「セフィロス…… す、すまない…… ありがとう」

「別に礼を言われる筋合いはない。おまえのグズグズが面倒くさいだけだ」

「……ああ、もう、わかった、わかったよ、ヴィンセント。そのかわり、具合が悪そうに見えたら、すぐに連れて帰るからね? アンタの状態が元に戻るまで、ホテルから出さないから!」

 俺はくどいくらいに、そう念を押した。

「……わ、わかった、クラウド」

 慎重に頷いたヴィンセントを連れて、俺たちはヤズーのところへ向かうことにした。

 終わってみれば、今回最大の貧乏くじを引く形になったのは、普段要領のいいヤズーだった気がする。

 そんな想いを抱きつつ……