〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<45>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 



 

 ヴィンセントのとなりの席に落ち着いてから間もなく、スーッと照明が落ちた。

 予定よりも三十分ほど遅れて、いよいよ開幕らしい。

 演目は……ええと……

 あ、いや、その前に皇太子殿のご挨拶がある。まぁ、仲良くなった俺的にはここはエールを送っておきたい。

 こんなクソ広い講堂で、満員の客を相手に、『皇太子』という立場で話をするんだ。コントをするわけじゃない。そりゃ緊張するだろう。

 ちらりと隣のヴィンセントを盗み見ると、まっすぐに舞台のほうを見つめている。よく見えないはずなのに、その真剣な面持ちにちょっと嫉妬しそうになった。

 

 緞帳が上がりスポットライトが、ひとりの青年を映し出した。

 二階席とはいえ、特別のボックス席からだから、彼の姿は真正面にとらえられる。だが決して大きくは見えないはずなのだが、中央に立つ彼は非常に堂々とした存在感を漂わせていた。

 

「国民諸君……! 今日は、こういった形で皆さんと逢うことが出来、ルーファウス神羅社長、およびWRO局長リーブ氏に深く感謝している」

 マイクを通さずとも、朗々と響き渡る声音で、まずはそこまでを一気に言った。

「数年前のメテオ災害は、諸君らの心に大きな痛み、苦しみを刻みこむと同時に、我々人類に大きな警鐘を鳴らしてくれたのだと、私は感じている」

 彼は一挙に話の根幹に入った。ヴィンセントが身を乗り出すように耳を澄ませる。

「この世界は魔晄エネルギーを利用することで、わずか数年のうちにここまで発達した文化を有した。諸君らの家に明るい電灯を点し、安全な食品を供給し、様々な形で我々の生活に恩恵をもたらしたのだ」

 ライトが落ちる前までは、ざわざわと落ち着き無かった客席が、シンと静まりかえっている。レノの話では、この話の内容は、マイクを通し、屋外にも届けられているとのことであった。

 皇太子殿はさらに話を続けた。

「だが、我々は一度はもたらされた恩恵に感謝したものの、その状態が常となるにつれ、あたりまえのことと感じるようになった。魔晄エネルギーはこの星の命。それを人々の幸福のために使うのではなく、さらなる『利便性』を追求したことに、我々人間の傲慢さがあった」

 彼はあくまでも「我々」という言葉を使い続けた。

「……それは『神羅カンパニー』という、ひとつの巨大企業のみの責務ではない。魔晄エネルギーの恩恵に浴し続けることを選択した、我々、この星に住むすべての者たちに責任があるのだ」

 皇太子殿の物言いに、つらそうな……それでいて切なげな吐息が会場を揺らす。

 ……そう、確か、ヤズーも似たようなことを言っていたことがある。

『もちろん、神羅がしてきたことは大問題だけどね。こと魔晄エネルギーについちゃ、みんな共犯みたいなもんでしょ』

 って。

 俺はまだその時、『神羅憎し!』の一念で凝り固まっていたから、素直に頷けなかったんだけど……

 でも、ヤズーや皇太子殿の言っていることって、間違っていないんだと思う。

 自分自身のことを考えて見ても、そう。

 日々の生活の中で、魔晄エネルギーを使うのは、あたりまえのことになっていた。というか、魔晄エネルギーがなければ、普通に生活することができなくなっていたのだ。

 もちろん、俺だけでなく、程度の差こそあれ、この星で生活する人間は皆そうだったと思う。あのアバランチの連中でさえ、魔晄エネルギーと無関係というわけにはいかなかったはずだ。

 そう……ようは程度の問題だったのだ。

 神羅は『企業』として利益の追求をしたのだ。そして、一般人民がそれに乗った……そういう図式なのだから。

 

 

 

 

 

 

「だが、あの痛ましい事件は我々の目を覚まさせてくれた。今、街は徐々に復興を果たし、WRO、神羅カンパニー始め、諸企業は、このミッドガルの地で世界の再建を目指している」

 そこまでいうと、彼は最後に穏やかに、だが今まで以上に響き渡る強い声で、しっかりと締めくくった。

「今こそこの地に生ける者同士が手を取り合い、共に生きる場所を蘇らせる時である。そして、我ら皇室の者も、諸君らと同じ目線で協力し合いたいのだ。此度の三者会談はその第一歩である!」

 

 皇太子殿は一礼し、再び緞帳が下りてくる。

 物音ひとつしない『間』……

 

 パラパラ……

 とあられのように、聞こえてきた拍手の音が、わずか数秒後には会場を揺るがすような大歓声に変わった。

 俺も一生懸命拍手を送る。

 皇室の人は政治や経済に関わりはないって言ってたけど…… ああ、でも、やっぱり人の上に立つ者なんだなぁ……と。そんなふうに感じた。

 どちらかといえば、それこそレオン似で、口数が少なく無愛想な皇太子殿が、あんなふうに力を込めて、皆を励ますなんて……

 カッコイイじゃん!

 

 となりのヴィンセントも、惜しみない拍手を贈っていた。

 ああ、あんなに叩いたら、手が痛くなっちゃうじゃん!って心配になるほどに。