〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<26>
 
 ヤズー&クラウド
 

 

 

 

 

Side Yazoo

 

「端的でいいね。前はもうちょっとおしゃべりだったよね、姐さん」

 女豹のごとく跳躍する女の身体。巨大な鉄環以外にも、この肉体こそが彼女の武器なのだ。バネのような身体から繰り出される手刀は、たやすく大木を打ち砕き、石の壁を抉る。 普通の人間が、こんなものを直接受け止めれば、内臓破裂でひとたまりもないだろう。

「殺す……!」

「バカのひとつ覚えじゃあるまいし、もう少し気の利いたセリフを言ってくれない?」

「黙れ……! おまえはこの場で死ぬがいい!」

「チッ……!」

 ガゥンガゥン!

 動きを止めようと銃を放つが、信じられぬスピードでそれを避ける。パワーはともかく、身のこなしは以前よりも速度が増しているようにも感じられた。

 無表情な白い顔…… 俺の記憶では『朱のロッソ』の名に違わぬ、激しい気性の女だったはずなのだが……

 それこそ、命の宿らぬロボットのように、すべてを攻撃に向けて彼女は襲いかかってきた。

 美術館をはばかりつつ闘うのは、かなり厳しい。以前戦ったときにはない、不気味な『気』を感じるのだ。

 

 ……先の庭でも銃声と人の怒号が聞こえる。

 それはそうだろう。彼女ひとりで襲撃してきたわけではないのだろうから。

 だが、ツヴィエート以外のDGソルジャーなら、兄さんが遅れを取ることもあるまい。一番まずいのは……目の前のツヴィエートにここを突破され、主要人物の揃った場所へ侵入されることだ。

 何が何でも、ここで食い止めなければならない。

 俺は装飾過多な純白の長い上着を脱ぎ捨て、改めて彼女に向かった。

 

 

 

 

 

 

Side Cloud

 

「リーブ! そのまま室内に入って! 殿下、絶対に建物の中から出ないでね!」

「だ、だが……ルーファウス神羅……」

 何かあったのかと不安げな面持ちの皇太子を、俺は必死にいなした。

「いいから、いうこと聞いて! リーブ、早く皇太子殿下を連れていってッ!」

「わ、わかりました! クラ……いや、ルーファウス社長、お気をつけて……ッ!」

 リーブが皇太子殿下を引っ張って、美術館内に戻るのを後ろ手に確認して俺は広すぎる庭園へ駆け戻った。

「アンタら、下がっててくれ! 俺がやる!」

 神羅の兵隊たちを下がらせる。必死で戦ってはいるものの、彼らは普通の人間なのだ。下っ端とはいえ、DGソルジャーを打ち倒すのは至難の業だろう。

 敵は十名余り……いわゆるツヴィエートと呼ばれるような輩はいない。

 見ればわかる、こちらには主力を裂いていないのだ。いくら護衛が付けられているとはいえ、民間人相手なら、この程度の連中でも殺れると踏んだのだろう。

「……ま、その目算は間違っちゃ居ないかもしれないけどね。残念でした」

 さすがの連中も俺がルーファウスの影武者だとは知らなかったろう。気づいたときにはすでに遅し……だ。

 早くこの場所を始末して、ヤズーの加勢にいかなければ。

 いつもの大剣じゃないのが、やや心許ない。

 俺は刀を握り直し、こちらに飛びかかってくるDGソルジャーに応戦した。

 

 美術館の大窓に、皇太子殿下が張り付いている。

 あーあー、見られたくないのに! なるべく皇太子殿下には危険じゃない場所に居てもらわないと困るのに!

 ったく、リーブの阿呆め!狙撃されたら一発じゃんか! ちゃんと彼を守ってくれよな!

 ルーファウスが言っていた。

 皇太子に万が一のことがあれば、すべては水泡に帰すと。

 いや、それどころか、状況はさらに悪くなる。治安は乱れ、人々の心の中に悪心が生まれ、ふたたび混沌とした世界に戻ってしまう。

 DGソルジャーは、いかなる理由をもってしても邪魔な存在だ。彼らも神羅の被害者ならばこそ、一刻も早く今度こそ安らかな永久の眠りに着かせてやるのが、同胞である俺の仕事とも言える。

 

 まぁ、アレ。今、ちょっとかっこいいこと並べてみたけど、本音のところでは、どうでもいいんだ、俺的には。ただ、上手くやらないとヴィンセントの薬がもらえなくなる危険性があるから。ただそんだけ。

 

 ……でも、きっと俺の大切なヴィンセントは、この場所が災禍に襲われるのを悲しむだろう。それならば、すべきことはただひとつ。

 ヴィンセントの心に添うように動いてやればいいんだ。

 

 向かい来るDGソルジャーを、一体、また一体を斬り倒し、俺は心の中で謝った。

「ゴメン。今度こそ、ゆっくり眠ってね」

 と。