〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<最終回>
 ザックス
 

 

 

 ジェネシスの自己回想で、この話は終えてやりたいところだが、シメはやはりこの俺、ザックスだ。

 

 その日、久々の休暇に部屋でくつろいでいた俺は、真っ赤な顔をして帰ってきたクラウドにひどく驚かされたのだ。

 先月、おたふく風邪を患ったとき、真っ赤な顔をして高熱を出した。ハムスター顔負けに頬を腫らせ、荒い息を吐く彼は、ただ見ているだけでも胸が痛んだ。

「ハァハァ…… ザ、ザックス……!」

「おう、おかえり。どうした顔真っ赤にして。走って戻ってきたのか?」

「あ、うん…… いけない! 廊下走っちゃダメなんだった」

 クラウドは早口でそうつぶやくと、ふらふらとベッドに腰を下ろした。そのまま、ポスンと仰向けに寝転がる。

「ふあぁぁ〜」

 と大きく息を吐き出した。

「お、おい、具合悪いのか? メディカルセンターに行ったなら、ついでに診てもらってくればよかったのに」

「…………」

「クラウド……?」

 いつもは桜色の頬が、今は濃いピンクだ。まるで発熱しているように。

 鈍い俺は、この段に至っても、クラウドに何があったか想像すらもしていなかったのだ。

 

「ザックス…… あ、あのね、セ、セフィロスさんのことだけど……」

「おう、具合はどうだった? 負傷なんざソルジャーやってりゃしょちゅうだが、セフィロスが入院なんてのはめずらしいからな」

「あ、う、うん。包帯いっぱい巻いてたけど、元気だったよ。……あ、お菓子持って帰っていいっていわれたのに、忘れて来ちゃった!」

 クラウドはどこまでも幼かった。

「面会謝絶だってのに、見舞いの品は満載かよ。まぁ、お偉方から無理やり贈りつけられたんだろうけど」

「う、うん…… とにかく怪我は大丈夫と思う。いつもと変わらない感じだった。……あ、ううん……やっぱちょっと違かったかな」

 ごしごしと頬を擦ってクラウドはつぶやいた。せわしなく身を揺する。

「どうしたよ、セフィロスの容態は良かったんだろう。もう何も心配いらないじゃないか」

「……ザ、ザックス! あ、あのね!」

 頬をさらに紅く昂揚させて、クラウドは身を乗り出してきた。

 

 

 

 

 

 

「……告白、か。ついに……セフィロスのヤツ……」

 クラウドに話を聞いたときには、驚くと同時に何だかホッとしたようなおかしな気分になった。

 目の前のこの子には、寝耳に水の話であったろうが、俺がセフィロスの想いを聞かされたのは、もう大分前のことだ。

 実のところ、最初は一時的なものだろうと、タカを括っていた。

 だが、玄人専門のセフィロスにとっては、初めての恋愛……まさに初恋というシロモノだったのだ。

 命がけで彼のピンチを救い、今もまたクラウドを守るために傷を負って病床にある。

 

 ……この俺は、声高らかにノンケと言わせてもらうが、そんな立場から見ても、セフィロスの、クラウドに対する真剣さには尊敬すら感じていた。

 

 その彼がついに思い人に告白をしたのだ。

 思わず『よくやった!』と快哉を叫びそうになった自分にも驚いたが、やはり無理があるとも感じる。

 ……男同士であること、英雄と修習生、エロ大魔王と雛チョコボ……

 

「うん、『好き』だって言うの。でね、おれ、驚いちゃってね。もうホントにびっくりしちゃって。どうしていいかわからなかったの」

「え、ああ、まぁ、そりゃ驚くよな。ウン」

「でね、でね、どうしていいかわからなくて逃げて来ちゃったの」

「………………」

「どうしよう、ザックス。おれ……」

「逃げて……?」

 確かに、その場ですぐに返事ができる内容ではないだろう。

 だが、逃げてきたとは…… これはさすがにセフィロスに同情にする。きっと今頃、動きの取れない病室で悶々としているに違いない。

「いきなり飛び出してきちゃって……失礼だったかな。お菓子ももらい損なっちゃったし」

「いや、菓子はどうでもいいだろ…… それより、逃げたって……セフィロスになにかされたのか?」

「え? まさか、セフィロスさんがそんなことするはずないじゃない。ただ、口でそう告げられただけだけど…… 最初、何言ってるのかよくわかんなくて……だんだんわかってきたら、今度はどうしていいのかわかんなくなっちゃったの」

 身振り手振りを交えて、クラウドは一生懸命説明してくれる。それにしても、『わかんない』コトの多いヤツだ。

 

 ……やれやれ、ジェネシスの予想通り、前途多難の告白になったようだ。

 後はなるようにしかならないだろう。

 

 実際、この騒動に決着がついたのは、大分、時が経ってのことだった。

 

 セフィロスのこと、VIPルームのすごさ、もらい損ねた菓子について、興奮したまま怒濤のごとく語るクラウドに、俺はあいまいな笑みを返すことしかできなかったのだ。

 

 さて、クラウドとセフィロスの恋の行方は、また後日談だ。