〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<10>
 ジェネシス
 

 

 

 

「……詫びることじゃないだろ。むしろ一般兵やソルジャーの手が借りられるなら、民間人を守りやすくなる」

「ああ、おまえならそういうと思ってた。どうにも俺は人を動かすのが苦手でね。おまえが居てくれて助かった」

「よくもいう」

 幼い頃からの友人の顔を垣間見せ、アンジールはトンと俺の胸元を叩いた。

 

「今回は俺に親玉を譲ってくれ。ソルジャー・クラス1stとしてたまには頑張ってみるよ」

「人工知能をもつという輩…… 相当な力を持っているようだ。……気をつけろよ」

 俺の軽口には応じず、ひどく真剣な眼差しでそう告げられた。

「了解、指揮官殿!」 

 と笑みを返し、俺とアンジールはその場で別れた。

 

 人工知能をもつ……  だとしたら、俺のカンが正しいのなら……

 

 全力で元来た道を走り戻る。

 人工知能…… 戦闘能力に長けた身体能力のみならず、知恵……知識までもを植え付けているとしたら……

『考える』ことができる輩なら……

 

 LOVELESS通りを走り抜け、五番街に戻る。

 行きにも感じたが、五番街は比較的被害が少ない。もっとも、五番街とは言っても東西南北に区画割が為されており、俺たちはいわゆる『西』側から戻ってきたことになる。

 アンジールが向かったのは十番街。こことは逆の方向だ。

 

「一応、ここだけは見ておくか」

 一人つぶやく。

 五番街から、本社へ向かう道が続いているのだ。つまりここは最も本社へ近い市街地ということになる。

 未だこの場所を徘徊しているとは思えないが…… だが、万一という可能性も捨てられない。

 剣を手に西から北、東へと移動した。

 

 とんだ拾いものは、東区画で見つけた。

 

 

 

 

 

 

「おい〜、痛ェ〜 痛いぞ、と! 通りがかりの優しい人〜、医者呼んでくれ〜」

 聞き覚えのある声に、俺は足早で蹲る影に近寄った。

「……そこで何をしているのかな、タークスのレノくん。『通りがかりの優しい人』は俺だよ」

「ゲゲッ! て、てめェは……」

「馳せ参じた白馬の王子に、『てめェ』はないだろう?」

 傷を負っている身でありながら、月光で俺の顔を見た途端、ズザザと音を立てて後ずさった

「なんでアンタが…… ああ、そっか。ついにパツキン気障男が、ソルジャーも呼んだんだな」

「パツキン気障男。あはははは! なかなか上手いあだ名だな。確かにすぐにラザードの顔が思い浮かぶよ」

「……なんですぐわかるんだよ。ルーファウスの坊ちゃんもパツキンで気障な男だと思うけどな」

「あれはまだ『男の子』だよ。ほら、レノ、しゃべってないで上着脱いで」

 戸惑う彼にかまわず、さっさと引ん剥いてやる。

 

「……出血が多いだけで骨は折れていない。今、止血する」

「い、いいよ。アンタがわざわざ手ェ汚すことないだろ」

「ふふ、文字どおり『手を汚す』か。こういう方が俺には向いていると思うんだよねェ。ああ、ほら動くな」

 レノとしては、救急部隊に連絡だけしてくれればいいということだった。だが、ここでタークスに貸しを作っておくのも悪くはない。

 

「よし、もういいぞ。背の傷は浅い。ほとんど血も止まりかけている。問題は左肩だな」

「あ〜、やっぱね。肩……痛ェぞ、と」

「ああ、大分深い。骨までは行っていないが……」

 場合によっては縫う必要もあるだろう。

 そう言ってやろうかと思ったが、寸でのところで口を塞ぐ。

 これから厄介な人形を相手にするのだ。怪我人イジメなどしては幸先が悪くなる。

「痛むだろうが、血止めを塗り込んで、ギチギチにテーピングする。本社に戻ったら、即刻メディカルセンターへ行けよ」

「わかってるぞ、と」

 ゆらりと彼は立ち上がった。

 一瞬、しかめ面をするが、左手が自由に動くことを確認して、ホッと安堵の息を吐いた。