〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<3>
 ジェネシス
 

 

 

「ハァ……」

 紅茶のカップから唇を離し、軽く溜め息を吐いた。

 ソルジャーフロアのティールームで一休みだ。

 いつもはクラス1st専用の執務室に置いてある、気に入りの茶器で一服するのだ。だが今は、生真面目なアンジールの邪魔はしたくない。

 明日からの任務のために、資料を読み込んでいるはずなのだ。

 

 ……どうにもこうにも厄介なことになりそうだ。

 俺の場合、嫌なカンほどよく当たるのだ。

 

 セフィロスの病室を去り際に、『上手く立ち回れ』と忠告を残してきたが、それは無理だとわかっいる。もう十年近い付き合いなのだから。

 ただ、ほんの少しでも自重してもらえれば……と、そう考えて言い置いた。

 

 ルーファウス神羅は、次の社長になる人物だ。

 幼い頃はともかく、十代も半ばを過ぎれば、社内での立場や発言権も強くなる。

 

 現社長は老いた。

 何もないところから、神羅カンパニーを作り上げた伝説の男……

 肩書き、経歴はご立派なものだが、今はただその地位に安住している老害だ。

 ワガママ一杯のルーファウス副社長にも困りものだが、見た目だけは父親に似ていない。そこだけは、俺にとって『マシ』な部分に見えた。

 

 ほぅ……と、知らずのうちに吐息が漏れる。

 

 ……ああ、女神。

 ニブルヘイムの屋敷に眠る俺の女神よ。

 

 俗世は、なんと煩雑で汚穢なことか……

 もし、許されるのなら、横たわる君のとなりで、永い眠りについてしまいたいよ。

 もっとも、君のほうが先に目覚め、姿を消してしまう恐怖を思えば、実行することはできないけど。

 それとも君は、自分を抱きしめたまま眠っている男に首を傾げるのかな?

 君が目覚めの口づけをしてくれれば、俺はどんなに深い眠りの淵からでも、すぐさま戻ってこようとも。

 そう、必ず……

 

 

 

 

 

 

「あの……ちょっと……キモイんだけど」

 無礼きわまりない発言に、無機質な防弾ガラスの向こうに、やはり鉛色の都会の空が見える。

 一挙に現実に戻され、俺は心の底からの溜め息を吐き出した。

「失敬だな、ザックス」

 ツンツン頭の後輩に、剣呑な眼差しを向ける。

「だって、難しい顔してたかと思ったら、今度は変ににやけて…… やれやれ、アンタといい、セフィロスといい……」

 ここはソルジャーフロアのティールームだ。

 もちろん、カップ片手にザックスが突っ立っていてもおかしくはないのだが。

「アンタがこんなところで茶ァしばいているなんざ、めずらしいな。ビニールカップは嫌いじゃなかったのかよ」

「俺だって執務室に居たくないときくらいあるさ」

「そりゃ毎日だろ」

 ツケツケとザックスが言い返してきた。

 なんとなく気が立っている風に見えるのは、やはりセフィロスの一件か。

 

「ああ、悪ィ…… そこ座っていいか?」

 俺がフォローを入れる前に、ザックスのほうから謝ってきた。突っ慳貪な態度は八つ当たりに他ならないと自覚したのだ。

 軽く手を開いて、まったく気にしていないというポーズをとってやる。

「もちろん。ちょうど話し相手が欲しいと思っていたところだ。特に一緒にニブルヘイムに行った仲間のな」

「……俺とセフィロスとアンタの三人きりだろうが」

「そう。そしてセフィロスは、まさしく青春まっただ中。とても他のことは考えられないだろうよ」

 笑みを浮かべてザックスを眺める。彼はどことなく居心地悪そうな態度であったが、やがて一言、

『……そうだな』

 とつぶやいた。