Summer storm
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<19>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

 

 

急いで居間に引き返し、受話器を取ると、なんと電話の相手はロッズだった。

 

「え……? そ、それで、今はどこに……あ、いや、そうだな……わかった、すぐに迎えに行こう」

「なに、どうしたの、ヴィンセント」

 私の声音を耳にして、ただごとではないと感じたのだろう。不安そうな顔でクラウドが訊ねてきた。

「クラウド、車を出してくれ。行き先は病院だ」

 私は言った。

 自分で自分の声が、いかに動揺しているのかわかる。

「え、なに……」

「ヤズーが事故に遭ったらしい……」

「ええッ?」

「いや、大けがというわけではないらしいのだが……いずれにせよバイクはダメだ、車じゃないと……」

「わ、わかった」

 

 

 ロッズの電話を要約するとこういうことなのである。

  

 買い物の帰り道、ヤズーが事故に遭ったというのだ。幸い、大ケガというわけではなく、足をやられただけだという。

 近くにいた人たちが病院に連れて行ってくれたが、自分では何をしていいのかわからないからすぐに来て欲しい……と。

 

 私とクラウドは、すぐさま車に乗り込んで、指定された病院に駆けつけた。

 

 セントラルホスピタル。

 『セントラル』とはいっても、イーストエリアのセントラルだ。コンドミニアムから徒歩でも行ける距離だが、今は車で走る2、3分が、ひどく長く感じられる。

 

 私たちが到着したときには、すでに手当は終わっていた。

 外来の個室にヤズーたちを迎えに行く。

  

「ヴィンセントッ! 兄さん! 待ってたんだよ〜!」

 ヤズーよりも泣き出しそうなのはロッズのほうだ。

「ヤズー……大丈夫か?」

 きっと形相が変わっていたのだろう。

 ヤズーは私を見て苦笑した。

「あなたの方が病人みたいな顔色だよ、ヴィンセント。ごめんね、兄さん。ドジ踏んじゃったよ」

「いや……無事ならいいんだ……でも、どうしたんだよ、おまえらしくもない」

 クラウドが言う。

「うん、ちょっとね」

「痛みは……? 裂傷ではないと聞いたのだが」

 私が重ねて訊ねる。

「うん、そこまで間抜けじゃないよ。捻挫らしい。ただ、思いっきり捻っちゃったみたいで……みっともないなァ、はははは」

 彼は力無く笑った。

 大ケガではないと聞かされていたものの、真っ白い包帯は目に痛々しく、直視するのがつらかった。

 

 結局、怪我の理由を知ったのは、俺たちがヤズーの代わりに、薬を受け取りに行ったときのことであった。

 年若い看護士が手柄顔に教えてくれたのだ。

 

 子猫を助けたのだという。

 くわしく話すと、買い物帰りの親子連れとのすれちがいざま、はしゃいでいた少女の腕から、子猫が逃げ出したらしい。

 車にひかれそうになった小動物を守り、事故に遭ったのだという。

 

 クラウドは意外そうに「へぇ……」と声を出した。だが、私はそれほど驚きはしなかった。

 近寄りがたいほどに整った外見からは、想像もつかないが、彼はとてもやさしい人物なのだ。

 いつも助けてもらっている私には、それがよくわかっている。

 今回のことも、ヤズーらしいと思えばこそ、不可解などとは感じもしなかった。

 

 なにはともあれ、我々はヤズーとロッズを伴い、セフィロスの待つコンドミニアムへの道を戻ったのであった。