〜 Restoration<修復> 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

 

 その後、子供たちも約束通りに帰宅し、私たちは四人で晩の食卓を囲んだ。

 今夜はクラウドも仕事で泊まりなのだ。

 いつもは六人でいっぱいのテーブルなのに、今日はとなりと向かいが埋まっているだけだ。

 ヤズーはいつもと変わらぬマイペースで、それでもやはり話術は巧みで。後のふたりは遊びから帰ったばかりの興奮が残っているのか、よくしゃべった。

 おかげで、恥ずかしい告白をして意気消沈だった私も、食事の間は気を紛らわすことが出来た。

 だが、やはり口に出した想いは深くて。

 いや、言葉にしてしまうことによって、あらためて私は『セフィロス』という人を、狂おしいほどに愛しく、大切な存在だと自覚していた。

 

「ふぁ〜あ、ヴィンセント、まだ寝ないのォ?」

 まもなく日付も替わろうという頃……たっぷりと午睡をしたせいで、眠気の訪れない私に、ヤズーがあくびをしながら声を掛けてきた。

 カダージュやロッズはとっくに部屋で眠っている。彼らふたりは本当に『お子さま』のように夜が早いのだ。

「あ、ああ、いや、もう休む。ヤズーも気にしないで寝てくれ。さきほど、うっかり眠り込んでしまったせいか……あまり……」

「ああ、そういやそうだったね。うふふ、ずいぶん気持ちよさそうだったからさ。起こすのも可哀想で」

「あ、あの……すまない。毛布までかけてもらって」

「あなたはいつもセフィロスにしてあげてるじゃない。そんなこと気にしないで」

 そういうと、ヤズーは、「暖かくしてなよね」とだけ言い残し、部屋に引き取って行った。

 
 
 


 
 
 

 

 ひとりきりで居間に取り残され、考えるのはやはりセフィロスのことばかりだ。

 もう四日目になる。

 いや、まだ『たった四日だろう?』と人はいうだろう。

 だが、セフィロスがこの椅子でうたた寝していたのは、はるか十年も前に見た光景……というような気さえしてくるのだ。

 クラウドと私……ふたりきりのこの家に、彼らが住み着いてから、この半年……そうまだ半年をちょっと出た程度なのに、もうずっと一緒に居られる気になっていた。

 半年という短い期間に、ずいぶんいろいろなことがあった。

 笑い話もあったし、つらい思いもした。

 家族をひっくるめて、巨大なトラブルに巻き込んでしまったこともあった。

 ようやく安寧な生活を手に入れたと思ったのに、本当にクラウドには苦労と心配ばかりをかけている。

 

 セフィロスは……そう、嬉しいこともつらいこともすぐに顔に出るクラウドとは異なり、彼はいつでもポーカーフェイスで、取り乱すところなど見たことはなかった。

 意地の悪い笑みを浮かべ、大抵のことはひょいひょいと軽く処理してしまう。

 そんなセフィロスにどれほど憧れただろう。

 

 昼間、ヤズーと彼の話をしたせいであろうか。

 私の心の中は、セフィロスの思い出でいっぱいになっていた。

 ……なにを……『思い出』などと……! そんな言葉を使いたくない。

 それではまるで、二度と逢えないようではないか。

 仮に……そう、もし『仮に』だ。

 セフィロスが恋人と一緒に居たいから、この家を出て行くと……そう言ったところで、「二度と逢えなくなる」わけではない。支配人の彼はコスタ・デル・ソルで仕事をしているのだから……そう、確か住まいは、ノースエリアの洒落たマンションだと、ヤズーが言っていた。

 だったら……そこに住んでくれれば…… ここにも立ち寄ってくれるかもしれないし……偶然に街中で会える機会もあろう。

 そう……永遠に会えなくなるわけではないのだから。

 彼がこの家にやってきた……その前の状態に戻るだけなのだから。

 でも、それで……本当にそれでいいのか……?

 セフィロスが、ではない。私の気持ちがそれで『いいのか』?

 

 

 いったい、どれくらいの時間、そのままの格好で座っていただろう。

 時計の針はすでに『今日』になっていた。

 ああ、後から思い返すことがあれば、これから私のすることは、言葉にするのも愚かしく、幼稚な行動だと頬を染めることになるのだろう。

 だが、このときは夢中で……そう飲めもしない酒をあおったような……熱に浮かされるごとき、心持ちであった。

 セフィロスに会いたい……いや、姿だけでも見たい……

 胸が苦しく嗚咽が漏れるほど痛切に、そう感じた。