Love letter
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<10>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

「だって本当のことじゃん。ねぇ、ヤズー?」

 とカダージュ。

「アハハハ、カダの言うとおりだねェ。俺はヴィンセントのこと大好きだよ。カダと兄弟でなかったら、きっと兄さんと決闘するハメに陥ってたと思うけど?」

 いけしゃあしゃあとイロケムシが言い放ち、末のガキがキャッキャッと声を立てて笑った。

「ヤ、ヤズーまで……からかわないでくれ……」

「もぉ、ヴィンセントってば、すぐそういうふうに取るんだからァ。でも、兄さんとセフィロスは一触即発だよねェ。よくヴィンセントのことでケンカしてるもんねェ」

「ヤ、ヤズー!」

「バーカ。このオレ様がまともにアホチョコボの相手をするわけないだろ。あれはからかってるだけだ」

「でも、ヴィンセントのこと好きでしょ?」

「好きだのなんだのという次元ではないな。気に入ったモノはもうオレのもんだ」

 ケッと悪態を吐いてそう言ってやると、ヴィンセントは茹でダコのように真っ赤になり、カダージュのガキは口をとがらせた。

「セフィロス、サイテー。ヴィンセントが好きなら、もっとちゃんとセージツにすべきだよ。きちんと『好きです』ってタイドにあらわすベキだよ!」

「ふん。『誠実』くらい、漢字で言えるようになったら、チビガキの話も聞いてやる」

「チビガキっていうなー!」

「それに『タイド』にはちゃんと表してやってるだろ。ホレホレ」

 オレは立ち上がると、ハシを握りしめたままのヴィンセントのかたわらに近づき、ぐりぐりと頭を抱き込んでやった。

「な、ちゃんと可愛がってるしな」

「く、くるし……」

 細い指で、オレの腕を引き剥がそうとするが、もちろん腕力の差は歴然としているのだから不可能だ。

「ああッ! ヴィンセントをいじめるなー! そんなの好きな人にすることじゃない〜!」

「大人の愛情表現には色々方法がある。まぁ、てめーもオレ様くらいになりゃわかるさ」

「セ、セフィロス……や、やめ……」

 もぞもぞと蠢く細身をようやく解放してやると、蝋のような白い頬に、ようやく赤味が差してきた。

「き、君は冗談が過ぎる…… 君もクラウドも彼らより年長なのだから……このようないたずらは……」

「ふぁ〜、あー、わかったわかった。さてとメシは済んだな。とろくさいおまえのことだ。さっさと着替えないと約束の時間に遅れるんじゃないのか」

「え、あ、ああ……」

 

 

 

 

「えーと、そのスーツなら、シャツはこっちのほうがよくない? え?ネクタイ? うう〜ん、ちょっと固すぎるよねェ。あ、ねぇねぇ、セフィロス!」

「ああん?」

「ね、これ、どっちのシャツがいいと思う。俺としては少し明るめのクリームのほうがいいんじゃないかと思うけど」

「……そのスーツは前にも着てたろ。別のにしろ、貧乏くさい」

 素っ気なくオレはそう言ってやった。

 案の定、着ていくスーツひとつ満足に決められないヴィンセントである。

「で、でも、これは君が買ってくれたものだし……」

 ぼそぼそと小さく口答えするヴィンセント。

「センスがいいものだろうから……」

「わざわざこの前と同じ服を着ていく必要はないと言っているんだ。やれやれ鈍くさい奴だな。おい、イロケムシ!」

 グズグズしているヴィンセントを置き去りに、ヤズーの奴を呼ぶ。

「同系統のシャツで、もう少し落ち着いた色合いのを選べ。スーツは……ああ、そうだな……」

 オレは無遠慮に、ヤツのクローゼットを漁ると、グレイッシュパープルの、染めた麻のスーツを取り出した。

「へぇ、気がつかなかった。うん、いい色! これ素敵じゃない。今度デートの時貸してヴィンセント」

「おい、無駄口はシャツを選んでからにしろ」

 素っ気なくそういうと、ヤズーは先ほどの開襟シャツと同じ形状で、やや灰色がかったオフホワイトのシャツを取り出して見せた。

「俺だったら、これ合わせるな。ネクタイはいらないよ」

「イロケムシだけあって、センスは悪くないな。ほれ、さっさと着替えろ、ヴィンセント」

「あ、ああ……ありがとう、これにする。……あ、あの……」

「ああ、そうか、ごめん、ヴィンセント。ほら、セフィロス出てよ」

「ケッ、なんだ女じゃあるまいし」

「さすがにギャラリーがふたりも居ちゃ着替えにくいでしょ。さ、いこいこ」

 イロケムシに押し出されて居間に戻る。

 

 やるべきことを済ませて、オレもそろそろ外出の用意だ。もっとも気取った格好などする必要はないから、着の身着のままのノースリーブで靴を履く。

 さきほどまで構ってやっていたのにあっさりと外出しようとするオレに驚いたのかもしれない。ヴィンセントは小走りに玄関に姿を見せた。

「セ、セフィロス……あ、あの……」

「ああ、そんな情けないツラをするな。ただの散歩だ。別に遠くに行くわけじゃない」

「…………あ、ああ。わ、私も用件を済ませたら……す、すぐに帰るから……だから……」

 尚も言い募ろうとするヴィンセントをいなし、オレはさっさと家を出た。

 

 予定の待ち合わせ場所……クラウドとの約束の場所に行くために、だ。