嗚呼、吾が愛しの君。
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<30>
 セフィロス
 

 

 

  
 

 

 

 ビシビシビシ……ッ!

 

 大気が硬質な音を立て、ひび割れる。

 肌にその振動が伝わり、風などないのに、空気が対流を起こすのだ。

 

「……ッ!」

 ガキどもが息を詰める。

 ヤツらにも、真の敵が誰であるのか、今まさに知り得たところであろう。

 

 ズ……ズズズ……

 

 低い地鳴りがする。

 オレはしっかりと両脚をふんばり、片手に剣を携えて立った。

 いよいよ最期の戦闘になるようだ。

 

「にい……さん……にい……さん」

 揺れる地面に這い蹲り、異形のものから、もとの人体に変幻したネロ。

 ずるずると身を引きずり、必死に腕を伸ばす。

 オレとクラウドの渾身の一撃を背に喰らい、もはや力尽きていると思っていたのに……ある意味、凄まじい生命力だ。

 

「にい……さん……!」

「チッ……くそ、おい、惚けているな、クソガキどもッ!」

 自らを励ますような気持ちでそう叫び、オレは地を蹴った。

 すぐさま、クラウド、ヴィンセント……そしてやや遅れて三兄弟どもが続く。

 

 ……閃光が煌めいたのは、果たしてそのときであった……

 

 このオレが、今まさにネロにとどめを刺し、白髪の男をも刀の錆びにしてやろうと斬りかかったその時……

 

 カッ!

 

 と蒼白い光が周囲を包んだ。

 まるで爆心地のような閃光……思わず視界を奪われ、目を覆う。

 

 間髪入れずに、地鳴りが響き、ビキビキと音を立て、地が二つに裂けた。

 

「あぶな……ッ!」

「カダ!」

「ヴィンセントッ……あぶない!」

「ヤズー!」

「セ、セフィロス……ッ!」

 どれが誰の声だったのか。

 やや悲鳴じみた連中の声を耳にする。だが、それさえも畳みかけるような轟音に掻き消された。

 

 ガガガガッ……ガッ……!!

 

 めくれ上がった床が突風で吹き飛ばされる。

 身を伏せた上に、バラバラと降りかかる石礫。

 パキーンというガラスの割れるような硬質の音は、ヤツの後ろのポッドが砕けたのだろう。

 

 ゴゴゴゴ……ッ!

 ガッ……ガカッ!!

 

 面白いように揺れる地面。

 先ほどの衝撃でガキどもが吹き飛ばされた可能性もある。だが、濛々と噴き上がる白煙の中、ようやくそれを確認できたのは地鳴りが落ち着いてからの話だった。

 

 煙が舞い上がり、パラパラと石片が落ちてくる。

 噎せて咳き込みそうになる喉元を押さえ、オレは注意深く周囲を見回した。

 もちろん、誰よりも目の前の敵に注意を注ぎつつ。

 

 

 

 

「ゲホッ……ごほっごほっ……ヴィ、ヴィンセント……大丈夫?」

「……ああ」

 ……どうやらクラウドとヴィンセントは近くにいるらしい。

 ……思念体のクソガキどもはどこへ行ったのか。いや、さきほどの衝撃で吹っ飛ばされても不思議はないだろう。

 

「おい、ヴィンセント、クラウド! そこに居るかッ!」

 噴き上がる煙で視界のないまま、声を掛けてみる。

「げほっ、げほっ! セ、セフィ?」

「そうだ。無事だな!」

「……う、うん、平気! け、煙いけど……」

「セフィロス?セフィロス? ……君は大丈夫か?怪我などしていないだろうか……? あ、あの……ど、どこに居るのだ……?」

「何そんなに心配してんの、ヴィンセント。あのヒグマみたいなセフィロスが、この程度でケガなんかするわけないじゃん」

 ……小声で言っても丸聞こえだ、クソガキ。

 クラウドのボケナスは後でシメてやろう。

 ……だが、どうやらヴィンセントは無事のようだ……よかった。

 

 オレはホッと胸を撫で下ろし、安心した理由を、『ケガをされては足手まといになるからだ』と考えた。

 

 徐々に煙幕が晴れてくる。

 視界の向こうに直立した白い影が見える。

 その前で蠢く黒いものは、おそらくネロのヤツだろう。フン、まだ生きてやがるようだ、しぶといヤツめ。

 

「ヴァイス……にいさん……!」

 ネロの腕が差し伸べられた先……『純白のヴァイス』とやらが立ち上がっていた。

 その双眸に映っているのはただの虚空のみ……いや、未だ覚醒しきっていないのか、オレたちに気付く様子がなかった。