ハローベイビー
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家&おまけの『うらしま』〜
<25>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュウゥゥゥ……」

「ギィギィ……ギチギチ……」

 人間の出す声とは思えない、不気味な音……マスクで顔を覆ったDGソルジャーがウゾウゾと室内に侵入してくる。ドアひとつ隔ててすぐにこちら側……赤ん坊も子猫も居る寝室なのだ。

 さすがにこの人数を相手に、ひとりで応戦するのは厳しい。特に飛び道具を持っているとなると、戦況は不利だ。だが、ヴィンセントには赤ん坊を守ってもらわなくてはいけない。前線に出られては困るのだ。もちろん、ヘリの中のタークスには期待できないし……

 

 『セフィロス』は……

 いや、それこそ、勝手な考えだろう。彼はただこの場で巻き込まれただけ……それどころか、俺のせいで甚だしい迷惑を被っているのだから。

 

 ヴィンセントに向かって、そっと片手で合図する。

『ここは俺が押さえる。とにかく赤ん坊をレノに渡し、安全な場所まで移動しろ』と。

 聡明で賢明な彼なら、きちんと意図を読みとってくれるだろう。

「シュウゥゥゥ……」

「ギィギィ……ギチギチ……」

 ザクザクと足音が近づいてくる。

 連中をこの中に入れるわけにはいかない。赤ん坊がここに居る間は……とにかく!!

 

 ドガッ!

 

 片足で、寝室のドアを蹴り開け、間髪入れずに剣を振るう。

「ギィッッ! ギエェェェ!」

「キシャアァァァ!」

「ちっ!」

 つい舌打ちが出た。思ったよりも頭数が多いのだ。おまけに後ろに控えた連中は銃を手にしている。

「ギイギイ……」

「キシキシ……」

 錆び付いた歯車のような声を上げ、襲いかかってくるDGソルジャーども。それらを次々に剣でなぎ倒してゆく。

 確かに、ツヴィエートとはレベルが違う。一対一では負ける気がしない。

 もちろん生身の人間とは比べものにならぬ、敏捷さ、パワーは持っているが、同時に襲いかかられねば何とか凌ぐことができそうだ。ホテルに居る人間たちを危険にさらすのは本意ではなかったが、むしろせまい室内だからこそ、大人数相手に互角に戦うことができたのである。

 

 バラバラバラ……!

 

 ヘリの音が近づく。

 なんとか、赤ん坊を向こうに遣ることができれば……ずっと戦いやすくなる。

「ヴィンセント! 早く、赤ちゃん!」

「だ、だが……! クラウド、危ないッ!」

 パシン!と冷たい音がして、髪が僅かに切り落とされた。寸でのところでよけたのだ。

「くそッ! 何人いるんだよッ! ……ちいっ!」

 ズダダダダダ! ダダダダダダダァン!

 間髪入れず機関銃が火を噴く。

 窓を開け、ヘリを誘導するのも、タイミングが難しい。万一、ヘリに被弾すれば、唯一の脱出手段さえも失われる。

 ガラステーブルに足をかけ、体当たりを喰らわせた隙に敵を斬り倒す。

 敵の頭数は知れない。だが、とにかく今は連中の侵入を防ぎきること……それだけであった。

 

 

 

 

 

 

「ギィィィ!」

「キシェェェ!」

「おまえら、しつこいんだよッ! 出て行けッ!」

 ザンッ! ザシュッ!

 返り血が、綺麗なカーテンや床を汚して行く。人間の流すような血液の色ではない。異様に黒みがかったおぞましいそれ……

 ああ、こんなことを思う、俺はひどく残酷なのかも知れない。

 俺だとて、ごく普通の人間とはいえないのだから……いや、むしろこいつらDGソルジャーに近い者とさえいえるだろう。

 神羅の研究所で、セフィロス・サンプルとしての実験を受け、魔晄の光に晒されたこの身体……そう、ある意味で、かれらDGと俺は、兄弟のようなものなのかもしれない。

「ギィエエエ!」

「ギィアァァア!」

「うあッ!」

 バランスをくずして俺は床に転がった。

 ……バカバカしい。

 感傷的になっている場合ではないのだ。俺は俺として、自分の大切なものを守る……そうクラウド・ストライフとして、だ。

 神羅のソルジャーとかそんなことは、もはや何の意味も為さない。

「野郎〜〜ッ」

 セフィを真似て、口汚く悪態をつくと、ふたたび剣を手に立ち上がる。

 左の二の腕と、右の脇腹が微かに痛む……いつの間にか傷を負っていたらしい。だが、そんなものをいちいち確認する時間などありはしなかった。

 

 バラバラバラバラ……

 

 ヘリが窓の近くを旋回しているようだ。

 こちらの尋常ではない雰囲気を察しているのだろう。指定した場所に留まったまま、様子をうかがっている。

 ヴィンセントがこちらを見る。片手に赤子……そしてもう一方には使い慣れた銃を持っている。

 次に前に出てきた連中を斬り倒すと、俺はヴィンセントに向かって目線で合図を送った。

 もう待てないと思ったのだ。今ならヘリは窓際に着いて待っていてくれるが、敵の目もある。いつまでもモバリングしているわけにはいかない。ヘリがやられれば赤ん坊連れでこのホテルを脱出せざるを得ない。それはあまりにも危険が大きすぎると思ったのだ。