ハローベイビー
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家&おまけの『うらしま』〜
<15>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

 

「もしもし!もしもし!」

『え……あ?』

 レノも戸惑っている。当然、話し相手が見ず知らずの人物に変わってしまったのだから。

「もしもしッ 私はヴィンセント・ヴァレンタインと言う。事情があって、クラウドと同居している者だ」

「ちょっ……ヴィンセント!? どう……」

「し、兄さん。……ちょっと見ててあげようよ。ヴィンセントに何か考えがあるんだよ」

「だって、事情があって同居じゃないもん!恋人だもん!」

「あのさ……そんなところにツッコむの?」

 呆れ顔のヤズー。とりあえずそこには拘っておきたい俺であった。

「バーカ。アホチョコボ、黙ってろ」

 とセフィロスだ。

『あ、どーも。レノっす。もうホント、スンマセンね。メーワクかけて。同居っつったら、きっとアンタにも嫌な思いさせちまったんでしょーね。顔も知んないけど、マジ、スンマッセン』

「いや、そんなことはどうでもいい。君たちはこれからどうするつもりなのだ?」

 レノのだらりとした物言いを遮るように、ヴィンセントが綴った。こんな話し方をするのはものすごく珍しい。

『……クラウドの言っていること、もっともッスから。後は俺たちで……神羅カンパニーに居る連中でなんとかしますよ』

「だから、なんとかとはどうするつもりなのかと訊いているのだ。いくら不完全体とはいえ、DGソルジャーが相手なのだぞ? 民間人に危害が及ぶかも知れない。……WROに応援を求めたのか?」

 ヴィンセントが厳しい口調で問いつめる。レノも押され気味だ。

『い、いいや。そんなことはしてねーと思うぞ、と。あくまでも社内問題から端を発しているわけッスから。表向きはあくまでも身代金目当ての誘拐犯ってことにしてあるし。DGの事件をおおっぴらにはしたくねーんだよ……ねーんデス』

「……それは……!」

『いや、アンタ……ヴィンセントさんだっけ? クラウドの仲間なら、何を言いたいのかくらいは察しがつくがな。たぶん、アンタの言おうとしていることのほうが正しいよ。でもね、会社っつーか……組織になっちゃうと、そうもいかねーんだぞ、と』

「…………」

『ようやく表の商売で立ち直って来たところでしょ? メテオ事件を大衆に謝罪してさ。あの事件でまともに生活できなくなった人たちに無料で生活保護をしてきた。そういった企業姿勢が認知されて、徐々に信用を取り戻してるところなんスよ。……だからDGの話は公表したくない……つーか、できねーのよ』

 おかしな敬語混じりの物言いで、説明するレノ。電話をオープンにしているので、俺たちにも会話は聞き取れる。

「…………」

 ヴィンセントは黙ったままだったが、俺にはレノの気持ちもよくわかった。

 魔晄エネルギーの利用法を過っていたのは事実だ。だがそれは『すべてではない』。

 神羅の魔晄技術のおかげで医療は著しく進歩し、難病や怪我で苦しむ人々が多く救われた。もちろん、それだけではない。産業、流通……様々な面に置いて魔晄は有用なエネルギーだったのだ。それらの利用により、人々の生活は格段に豊かになった。

 そして、多くの人々は『その生活を自ら享受していた』という事実を忘れるべきでは無かろう。

 ルーファウスの父親の代になって、築き上げてきた信用にあぐらを掻き、人間の欲望を具現する方向に行ったのが誤りだったのだ。

                               

『……例の一件はミッドガルで起こっただろう? 不幸中の幸いというか、あのあたりは今は廃墟になっている。当然住民もいないからな。正確な情報は遮断されたままだ。同じ神羅の社内でさえもね。真相を知っているのは一部の人間だけだよ。……アンタらには申し訳ないと思うけど、ね』

 ボソボソとレノがつぶやいた。あのお調子者がこうまで言うのだから、本当にそう感じているのだろう。

『……悪い、ホント……ヴィンセントさん。クラウドやアンタらが納得いかないのは充分承知してるぞ、と』

「……だが、だとしたらなおさらのことだ、レノ。……DGというものがどういう存在なのか知らないまま戦うなど、自殺行為も同様だ。いくら神羅の社員とはいえ……戦闘員ではないのだから……」

『だからね、ぶっちゃけ、クラウドやアンタらに手助けしてもらえりゃありがてーなとは思っていたけどヨ。考えてみりゃ虫のいい話しだよね。クラウドの言うとおりだぞ、と』

「…………」

『……大丈夫だって。俺たちで何とかするワ。タークスあるかぎり、社長も社長の弟君もお守り申し上げるぞ、と。ヘッヘッヘッ……』

「レノ。もし、こちらが手助けすると言ったなら、どういう手はずにするつもりだったのだ?」 

 あまりにも唐突なヴィンセントのセリフ。

 えええッ!? ちょっと……何言いだしてんの、ヴィンセント〜〜〜ッ!? いっさいそんな打ち合わせしてないじゃん!

 俺は彼の隣で百面相をした。

 レノと会話するヴィンセントは、先輩タークスそのものであった。しっかりとした落ち着いた口調。

『……赤ん坊連れて、ホテルに一時避難してもらうつもりだった。俺の手元に赤ん坊がいないのはとっくにバレてると思うし。クラウドの居場所が向こうに突き止められる前に、家を空にして、どっかに潜んでもらえれば当面はやり過ごせると思って、今電話したんだよ』

「……当面はやり過ごせても、いつかは決着をつけなきゃならないだろう?」

『それは、タークスがやるつもりだった。DGっつーのがどの程度の強さなのかは良く知らないが、まさかセフィロスほどでもないだろうしな。とりあえず俺らは特殊戦闘員なんだぞ、と』

 レノの言葉に、ソファのセフィロスが「フン」と鼻で笑った。