ハローベイビー
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家&おまけの『うらしま』〜
<12>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

「ちょっ……もう、どういうことだよッ! っつーか、なんで誰も気がつかないの、コレ!大事件になってんじゃん!」

 俺は大声を上げた。

「しっ……クラウド、静かに、赤子が起きてしまう……」

「だって……だいたいセフィ! アンタ毎日、新聞だの雑誌だの眺めているくせに、どうして知らないんだよッ!」

「黙れクソガキ! オレは政治と経済欄しか読まん。こんな地方紙のせせこましい事件面なんぞ辿っていられるか!」

「おっきな事件でしょ! それくらい気付よ!」

 噛みつく勢いで、俺は迫った。

「テレビを独占しているのは大抵貴様だろうが、チビチョコボ! ゲームばかりやっていないで、たまにはニュースでも見ろ、ガキがッ!」

「なんだと! 俺はね、昼間仕事で疲れてんの! テレビゲームは安寧な生活のためのリラックスアイテムなんだよ、コノヤロー!」

「ああ、もうよしなさいよ、ふたりとも!」

 畳みかける物言いで、ヤズーが割ってはいる。怒鳴り声ではないが、俺たちのくだらぬ口論をとめるには充分の強さを持っていた。

「今さらそんなこと言い合ってもしかたがないでしょう? 今日はもう遅いし……チビちゃんの容態も心配だから、休むことにしよう。明日になったら、また違う局面が見えてくるよ」

「ん……そうだな。よしよし、いい子だな。そのまま明日までぐっすりおやすみ……」

 赤ん坊を抱き上げるヴィンセントを、ヤズーが穏やかな眼差しで眺める。だが、俺とセフィロスはそんな雰囲気とは無縁のにらみ合いだ。

「フンだ!セフィのバカ!」

「ボケが!アホチョコボ!」

 互いにイーッとばかりに、意地を張り合って自室に引き取った。

 薬がよく効いてくれたのか、健やかに眠り続けるその様子だけが、目下のところ、俺たちの救いになったのだ。

 
 


 
 
 

 ……翌朝……

 

 ルルルルルル……ルルルルルル……

 ……カチャッ

『はい、(株)神羅、総合受付でございます』

「えーと……ルーファウス社長と話をしたいんだけど」

『……失礼ですが』

「クラウド・ストライフと言ってくれればわかると思う」

『……は、はぁ、しばらくお待ち下さいませ』

 受付嬢がそう告げると、電話からクラシックのメロディが流れてきた。もちろん、『お待たせ中』の音楽である。

 取り次ぎには多少時間がかかるだろう。なんといっても相手は『社長』という身分にあるのだから。

 

『……お待たせいたしました。社長からの伝言でございます。「用件はすでに了承済みである。あらためて当方より連絡をいたす所存」とのことでございます』

「……あっそ。じゃあ、こちらの番号を……」

『無用です。社長にはすでに承知置きとのことでございます』

「そ、そう……わかった」

『お電話、誠にありがとうございました』

 あくまでも朗らかにそう宣うと、電話は切れた。

 当然、受付嬢は何も聞かされてはいないだろう。ルーファウス本人は『筋書きを知っている』のだ。だからこそ、俺からの電話だと知ると、あらためてかけ直すと言っている。

 

「兄さん、どうなの?」        

 俺が受話器を戻すと同時に、ヤズーがそう訊ねてきた。

 今日は月曜日だが、俺は家に居る。代わりにカダージュとロッズに配達の仕事を任せたのだ。正直、のんきにバイクを飛ばしている場合ではなかった。

 あの子どもの身元が分かると同時に、どうやら俺たちはとんでもない事件に巻き込まれつつあることを知ったのだ。

「うん、折り返し社長のほうから連絡寄越すって。伝言が『用件はすでに了承済みである。あらためて当方より連絡をいたす』って言うんだから、何の用件かはわかっていると思う」

「折り返すっていうのは、盗聴防止だろうな。当然社内でも注意しているだろうが、組織だと限界がある」

 口を差し込んだのはセフィロスであった。

「うん……」

「ねぇ、ってことはさ、赤毛くんが、兄さんに赤ん坊預けたのは、社長の命令? 確か、社長直属の組織になったんだよね、タークスって」

「うん。前にレノがそう言っていた。でも、ルーファウスに言われてしたことかどうかは俺にもわかんないよ。あの時は話なんてする暇なかったもん」

「どんな感じだったの?」

「前にも言ったじゃん。『とにかく頼む!』『すごく急いでいる』って繰り返して……いや、それだってまともに会話したわけじゃないんだよ。ワケわかんないうちにぐいぐい荷物押しつけてさ。最初は赤ちゃんだって気がつかなかったくらいなんだから」

「ふぅん……」

 と、思案顔のヤズー。ヴィンセントは無言のまま赤ん坊に寄り添っている。

「……ったく、まいったな。早くルーファウスから連絡来ないかなァ」

「……ねぇ、兄さん」

「んー?」

「さっきから気になってたんだけどさ。赤毛くんはルーファウス神羅側……って考えていいの?」

「なに? どういうこと?」

「……その、言いにくいんだけど、彼が敵方に寝返って、あの子をさらったってことは考えられない? それで組織からの追ってを巻くために、何の事情も知らない兄さんに、一時的に預ってもらった……ってこと」

「……まさか」

 ぽかりと口を開けて俺は頭を振った。

 レノが神羅を裏切る?

 ……まさか……バカバカしい!             

 

「いや、無い。それはないよ、ヤズー。俺、昔からレノのこと知ってるけどさ。ちゃらんぽらんで掴み所のないヤツだけど、『そういうこと』はしないキャラだと思ってる」

「……そう。いや、一応聞いてみただけ。少しでも可能性があるなら、考えの内に入れておくべきだと思ってね」

 ヤズーが頷く。傍らのセフィロスは雑誌を目で追っているが、ちゃんと話を聞いているのがわかった。