〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
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 セフィロス
 

 

 

 ケフカの魔法攻撃を躱し、一挙に間合いを詰める。

 だが、逃げ足の速い道化は、まともに私と相対しはせず、薄ら笑いを浮かべてはね回るだけだ。

「どうした、道化。裏切り者を成敗しにきたのではないのか」

 またもや剣先から、ゆらりと身を反らせたケフカを嘲笑した。

「ケーッケッケッケッ! 『英雄』サンと正面からやり合う気は、ハナから無いッスよぉ、コレ。魔女様が獅子退治に行くっちゅーから、便乗しただけ」

「フン。いずれは我らも決着をつけることになろう。ならば、今この場で応じてはどうだ」

「だーかーら、言ってんでしょ!? あたしゃ、アンタとまともにやり合う気は無いんですよねェ。まぁ、魔女さんが、獅子退治を終えたら、一対二でやらせていただきやすよ!」

 ケタケタと耳障りな声を上げて、道化が嗤った。

「なるほどな。いかにも貴様らしい考え方だ」

 そう吐き捨てた私に、不気味な化粧を施した顔が、一瞬憎々しげに歪んだ。

「んなぁにをエラそうに! まさか、あたしゃ、アンタがコスモスのガキ共におもねるとは想像もしなかったさァ!」

「…………」

「アンタとは仲良くやっていけそな気がしたんだがなぁ! うざったい正義感振り回しまくりの、クソガキ共のどこが良いってのか、アタシにゃぁ、わかんないねェ!」

「別におもねっているわけではない。ただ単純にこの世界のしくみを知りたいと思ってな」

「ハァァァ? この世界がなんだってェ? アンタァ、カオスの戦士でしょ。何いってんのさ」

 想像通りの言葉が返ってきて失笑する。

「フ…… だからこそ、あの者たちと共に在る。彼らはこの世界の謎を解かんとしている。……私もそれに興味があるだけだ」

 長刀を閃かせ、そう答える。

 この不可思議な世界で目覚めた瞬間、私はごく当然のようにカオスの戦士として、存在していた。

 その理由も、なにゆえ、元の世界から召喚されたのかも、わからなかった。

 ただ、思いを残した人間……クラウドとふたたびこうして出逢えたことで、すべてを納得させようと考えていたのだ。

 クラウドと剣を交え、あのときの決着をつけられさえすれば、それでよいと……

 そう思っていた。

 

「私の目の前から消えろ、ケフカ。この正宗の餌食となるがいい……!」

「しつっこいなァ、英雄サン! アンタはあの若造のアシストっしょ!? だったら、あいつの手助けに行けばいいじゃな〜い!」

 尚もケフカに攻め寄った私に、道化はいかにも心外と言わんばかりの物言いをした。

「そうだ。これはあの男の闘いだ。……ならば、私が魔女以外の敵を一掃してやろうと思ってな。なんせ、あやつには一宿一飯の恩がある」

 とらわれの身となった私に、妙に手の込んだ料理を作る奇特な男……。

 それがまた、美味いときているのだから笑ってしまう。

 

 

 

 

 

 

「……もともと、この世界に呼ばれた意味さえもわからわず、カオスの戦士となった私に何人たりとも強制することはできまい」

「ちょっちょっ、ちょお〜っとォ! そいつを言っちゃぁ、おしまいでしょ、英雄サン!」

「事実だ。よって、私は、おのれの心の向くままに、この場所での時間を過ごすことに決めていた」

 特別、コスモスとやらに、共感するでもない。カオスだとて戦いを望むのならば、自らが動けばよいのだ。

 まずは、この世界の不可思議なしくみ…… 私と、クラウドらとの記憶の齟齬についての謎を解明する。

 この一点においては、スコールやラグナたちと、同意見であった。

 

「魔女サマ〜! 早いトコ、そっち終わらせてくださいよォ〜。この英雄シツコクて〜」

 魔法を操り空を自在に舞うケフカは、びょんとばかりに跳躍して、魔女とスコールの間合いに入ろうとした。

 ……私のこの場での役割は、あの男の戦いを邪魔させないことだ。

 魔女に加勢して、さっさと戦闘を終わらせようと考えたのか、スコールの不意を突こうとする。

 私はそれと同時に、地を蹴り、こざかしい道化を追い払った。

「くっそ〜! コノコノ、邪魔ばっかりしくさりやがって!」

 歯を剥いて怒りをあらわにするケフカを、刀の峰で叩き落とした。

「いったぁ〜い! もう、怒ったぞ〜!ぼくちん、怒ったぞ〜!」

「フン、ならば向かってこい、道化者」

 そう言い捨て、スコールの様子を伺う。

 だいぶ吐息を弾ませているが、周囲を確認するだけの冷静さは残しているらしい。

 私以上に、接近戦タイプのスコールにとっては、自在に空を舞い、魔法を駆使する魔女は相性の悪い相手なのだろう。

 やや不利に感じるが、ますます闘志を燃やしているように見える。

「セフィロス、手間を掛けてすまん!」

 側に寄った私に、スコールが言った。

「……別に、私が好きでしていることだ。それより大分消耗しているように見えるが?」

 わざとそう挑発してやった。

「おのれの未熟さを省みている。だが、絶対に魔女にだけは負けない!」

「……そうか。そうと聞いて安心したぞ」

「これは俺の戦いだ! それに……アンタの見ている前で、無様に負けはしないッ」

「…………」

 私がそれに返答する前に、すでにスコールの姿は傍らには無かった。魔女に肉薄し、翼の一方に剣を打ち込んでいる。

「なぁんでェ、あの野郎。妙にやる気出しやがって」

 ケフカのヤツが不愉快そうにつぶやいた。

 魔女とスコールでは、互いに対する憎しみの度合いが異なる。それが不利な立場の彼に力を与えている。

「よけいな手出しは控えろ、道化。もし、若獅子が敗北したのならば、この私が貴様らの相手をしてやろう」

 低くそうつぶやいた。