〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<30>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

 ボスン!

 と、派手な音を立てて、衆目の中、もつれ合って倒れ込む男ふたり……

 想像するだけで、最悪の構図だ。

 しかも、その片割れが俺という事実は、まさしく目を背けたい異常事態であった。

 女性とならばよいのかといわれれば、即答することはできないが、少なくとも年長の男とよりはマシだと思う。

 

「スコール〜! 会いたかったよ〜!」

 黒髪の男は、ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめてくる。

 横になったまま、セフィロスの冷ややかな視線に出逢って、慌てて無礼な抱きつき男を引き離した。

「どけ! 何なんだ、アンタは!」

「だから、パパだよ〜! あんとき、なかなか名乗れなかったんだけど、もういいよね!」

 話が飛躍しすぎていて付いていけない。

 俺は孤児で、ガーデンのSEEDになって…… もちろん、血縁上の両親はいるのだろうが、これまで考えたことがなかった。

 ましてや、こんな騒々しい不調法者など冗談ではない!

「いや…… とにかく、俺はアンタなど知らない。いきなり父親だと言われても信用できない」

 内心、パニックに陥っていたが、仲間たちやセフィロスの手前、動揺を押し殺してそう言い返した。

「スコール…… パパを許してくれよ。どうしても、事情があって離ればなれになっちゃったんだ。俺がどれだけ必死で、おまえのことを捜したか……」

「……だから! 俺はアンタを父親だと認められない! そもそも、似通ったところなど皆無ではないか!」

「スコール〜!」

 泣き真似ではなく、本当に瞳を潤ませて泣きつく中年男だ。

 名を『ラグナ』というらしいが、やはり俺には覚えのない人物である。

 とんでもない迷惑沙汰に巻き込まれて辟易とする俺であったが、クラウドらにも知り合いが登場したらしい。

 

 

 

 

 

 

「ティ、ティファ……? ティファがどうして……?」

「……クラウド……!? それにセフィロス……!」

 ティファと呼ばれた黒髪の女性が、燃えるような眼差しで睨め付けた。

 クラウドを、ではない。

 セフィロスのほうをだ。

「……どういうことなの、クラウド? どうして、セフィロスがここに居るの?」

「落ち着け、待ってくれよ、ティファ」

 セフィロスに向かって構えの体勢をとる彼女を、クラウドが慌てて止めた。

「待てないわ! 私たちの村を消滅させた張本人じゃない!」

「……女。ティファといったか。おまえはニブルヘイムに居た案内役の……」

「今さら何よ! どうしてアンタがここに居るの!?」

「だから待てって、ティファ! この世界は俺たちの知っている場所じゃないんだ。記憶が曖昧になっているんだよ!」

 尚も、セフィロスを責める少女を、クラウドが止める。何だかおかしな構図だ。

 ティファという娘はコスモスの戦士なのだろうし、クラウドもそうだ。セフィロスはカオス側。だが、そのカオスの戦士を、コスモスの戦士が同輩から守る形になっている。

「記憶? クラウド、あなた、覚えていないの? この人が突然、村を焼き払ったんじゃない! 私たちの帰る場所を無くしたのはコイツなのよ!」

「セフィロスには事情があったんだよ! 彼はあのとき、普通の状態じゃなかったんだ! アンタだって知ってるだろう?」

 セフィロスが宝条による実験生命体であったこと。

 その事実を、ニブルヘイムで見つけ出し、狂気に捕らわれたこと。

 セフィロスの本当に父親と母親について……

 

 どれもこれも、クラウドが俺に説明してくれた。

『だから、レオン……いや、スコールも、セフィを責めないで。本当に悪かったのは、昔の神羅カンパニーなんだよ』

 そう言って、目を伏せた彼は、今にも涙をこぼしそうな沈痛な表情を見せた。

 話を聞いているだけの俺の立場でも、セフィロスがどれほどの傷を負ったのかを想像に難くない。

 だからといって、何の罪科のない人々を虐殺することは許されない。

 クラウドは、彼の生きる星ために、セフィロスと対決することになったという。