コスタデルソルへようこそ 
〜コスタ・デル・ソル with ヴィンセント&銀髪三兄弟〜
<5>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

23:10

「クラウド、休まないのか?」

 ヤズーたちが部屋へ引き取ってからも、まだ居間でのんびりとしているクラウドに声をかける。

「んー、アンタは?」

「……私もそろそろ引き取らせてもらう」

「そっか、疲れたよな、眠いだろ」

「いや、それほどでもない。私は夜のほうが頭が冴えるようだ」

 冗談を言ったつもりはなかったのだが、クラウドが面白そうに笑った。

「……クラウド」

 私は声をあらためて、彼の名を呼んだ。

「ん? なんだ」

「……昼間のことだが……その……すまなかった、本当に」

 蒸し返す必要はないのかもしれないが、こういうことはきちんとしておかないと気が済まない性分だ。

「その……さっきはきちんと謝罪することができなかったから……」

「ヴィンセント……」

 クラウドが目を見張る。時折、彼は私を珍獣を見るような目で眺めることがある。

「……私は、自分ではよく考えてしゃべっているつもりなのだが……たまにひどく不用意な発言をしてしまうようだ……申し訳ない」

「…………」

「ひとこと言っておきたかっただけだ。呼び止めてすまなかった、クラウド。……ではこれで引き取らせてもらう」

 私は早口にそう告げると、自室へ戻った。

 

 

23:20

 部屋の扉を開け、大きめの寝台に腰掛けると、ホッと吐息する。

 身体が疲れているわけではないが、やはり精神的にはそれなりに疲弊していたのだろう。知らず知らずのうちにため息が漏れる。

 だが、つかの間の静寂を、ささやかなノックの音が遮った。

 

「ヴィンセント? 俺」

「……ク、クラウド?」

 さきほどおやすみと別れたばかりなのに、なにか言い忘れたことでもあるのだろうか。

「ああ、悪い。入っていいかな」

「あ、ああ、もちろん……」

 私がそう返答すると、すぐに扉が開いた。

 

「……ごめん、ヴィンセント。でも、アンタ、言うだけ言ってすぐ行っちゃうから……」

「え、あ、ああ」

「俺、なにも言ってないのに」

「……いや、私が謝りたかっただけだから」

 その通りの答えをする。

 

 するとクラウドは……

 ……なんといえばいいのだろうか。

 嬉しそうに、いや……もっとなんというのか……じみじみとした深い笑みを浮かべた。そして、

「ヴィンセント」

 と私の名を呼ぶ。

 

「……アンタさ、本当に正直な人だよね。そしてすごく優しくて誠実だ」

「? ……な、なにをいきなり……」

「いつも思ってるよ、俺。……神サマなんて信じたことは一度もないけど、あの旅でアンタと巡り合わせてくれたことだけは、何者かに感謝したい気持ちだよ」

「……ク、クラウド」

「ふふ、困ってる? ヴィンセントはすぐ照れるよね」

「……その、慣れていないのだ。そういった言葉には……」

「でも、嫌じゃないだろ?」

「あ、ああ、それはもちろん。私をそんなふうに思ってくれる人がいると知るのは……ひどく嬉しいことだ」

「また、大げさな! でも、アンタは本当にそう思って言ってくれてるんだよな」

「…………」

「ヴィンセント、好きだよ」

「…………」

「俺、アンタの側にずっと居させて?」

「……ク、クラウド」

「ね?」

「そ、それは、おまえが嫌でないのなら……」

「俺がアンタのことキライになるはずないだろ。その逆はあってもさ」

「それはない」
 
 私は間髪入れずそう答えた。

「ぶっ……ははは!アンタが即答すんの、俺、初めて見たよ。ヴィンセント、好き!可愛い!」

 彼はめずらしくも声を出して笑うと、寝台に座った私の膝頭にしがみついてきた。小型犬が甘噛みをしてじゃれかかってくる様子に似ている。

「よさないか、こら……」

「だってあんまり愛しくてさ」

「ク、クラウド……」

「大好きだよ、ヴィンセント……な、俺がアンタのこと、どれほど好きかわかるだろ?」 

「……あ、ああ、わかっている」

「ホントに大好きだからな」

「……ああ」
 

「……疲れてる? 今日」

「え?」

 

 私は本当に鈍感らしい。

 そこまで言われても、クラウドの言葉の意味を察することができない。

「別に……いつもと変わらないと思うが……?」

「……昼間、途中までだったろ」

「……え? あ……」

「続き、してもいいか?」

 そこまでハッキリ言われて、ようやく思い当たる私。我ながら情けなくなる。

 だが、落ち込んでいる場合ではない。今日は困る。……というか、彼らがいる間、そういったことに及ぶのは好ましくないのではなかろうか。

 

「……ク、クラウド……そ、それは……」

「ヴィンセント、最近一緒に寝てくれないし……」

「いや、だが……い、今はよくない」

「なに? もしかしてあいつらに遠慮してるのかよ? 関係ないだろ、そんなの」

「クラウド!」

「だいたい部屋別なんだぞ? わかりゃしないだろう」

 そういうと彼は、私の双肩を強い力で押さえつけた。自然の摂理でそのまま寝台に倒れ込んでしまう。

「クラウド……」

「なに? イヤなの?」

「……い、今は……よくない……」

「俺が聞いてんのは、ヴィンセントは嫌なのかってこと!」

「……え、あ……」

「そんな困った顔するなよ。アンタのそういう顔見ると……虐めたくなる」

 最後の一言を私の耳元でささやくと、クラウドは、そのまま噛みつくように口づけてきた。