墓 参
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<最終回>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「おっかえり〜! ヴィンセント! あー、セフィロスもね。荷物持ちご苦労さん」

「おかえり〜! お疲れ様、ふたりとも〜」

「ああ、ほら、ロッズ、車回してくれるか」

「うん、このまま駅前に着けちゃうね!」

「ヴィンセント、おかえり〜! 僕たち、晩ご飯まだなんだよ! ヴィンセントたちのこと待ってたの!」

「……ずいぶんとお早いお帰りで。いやね、もう、いったいコレ、何がどうなっているのかっていうか……俺的には、アレ……」

「まぁまぁ、チョコボ……じゃない、クラウド。いいじゃないか。予定通りトラブルもなく戻ってきてくれたんだからさ。やぁ、おかえり、女神。……セフィロスもね」

 

「み、みんな、わざわざ出迎えにきてくれたのか……? あ、ありがとう。とても嬉しい」

 ズレたセリフをかますヴィンセントに、オレは低く訊ねた。

「……オイ、これ、どうなってんだ?」

 デカイ男ばかりが、ずらりと並んで駅前に陣取っている。

「え……?」

「え?じゃねーだろ! なんで、こんなに勢揃いしてんだ、野郎どもは!だいたい、なんでこいつら、帰りの時間を……」

 ヴィンセントはきょとんとした表情でオレを見た。

 クラウドのするようなあからさまな呆れ顔じゃないが、わずかに目を瞠っただけで、ヴィンセントがこっちの問いかけに驚いているのは見て取れる。

「え? そ、それは、たぶん、さきほどヤズーに連絡を入れたから……」

「なんだとッ?」

「ヤズーに言われていたんだ。駅に着く前に電話してくれって。私はセフィロスが一緒だし、心配ないからと言ったのだが、きっと気遣って迎えにきてくれたのだろう」

「おまえ、オレと一緒だとわざわざ言ったのか?」

「……? もちろん」

 ああ、忘れてた……

 こいつは、恐ろしいほどの天然男なのであった……

「……おまえな、少しは空気を読まねェか……」

「え?え?」

 オレのつぶやきを耳ざとく聞き止めたのは、やはり鼻の効く連中であった。

 

 

 

 

 

 

「いやぁ〜、おかえりぃ、セフィロス。ハイハイ、ヴィンセントのボディガードご苦労様」

 とイロケムシ。このクソ毒虫野郎が!

「やぁ、セフィロス。少し会えなかった間に、ずいぶんと気配り上手になったんだねェ。確かに女神をひとりで旅行させるのは心許ないよね。……ヤズーに二泊三日限りと聞いたけど、なにも間違いはなかっただろうな?」

 おめーはウゼーんだよ、変態詩人が!だいたいどうしてこの輪の中に、部外者の貴様がいるんだ!

「ジェネシス!コノヤロー!変なこと訊いてんな! っつーか、アンタに尋ねる権利ないよね?赤の他人だもんね? ヴィンセントは俺の恋人なんだからな!!」

 いつまでも豆柴みたいなクソガキだから、連中にからかわれるんだぞ、クラウド!

 どの言葉も直接本人どもに叩き付けてやりたかったが、オレはけっこう疲れていた。

 ……精神的に。

 

「……騒々しくわめくな、ボケナスども。迎えに来たならさっさと帰るぞ」

「そ、そうだな、セフィロスはひどく疲れているのだ。い、いろいろと私を気遣ってくれて……」

 ヴィンセント、よけいなフォローは無用だ。

「彼と過ごしたこの三日……夢のように楽しくて……むしろ私の方の気遣いが足りなかったのだ」

 アホか!よけいに誤解されるだろーがッ!

 

「ま、話は家に帰ってからね。ふたりともお腹空いてるでしょ。食事の支度、できているから」

 鶴の一声ならぬヤズーの一声。

 極当然のように同行するジェネシス。

 自宅に戻っても一波乱ありそうだが、ヴィンセント、本人が嬉しそうならそれでいい。

 こいつにとって、何度目かの墓参が意義あるものになったのなら本望だろう。

 ……そして、オレにとっても。

 

『訊きたいのに答えを聞くのが怖い』

 こんな感情はいったい何年ぶりだろう?

 クラウドを側に置くようになったときでさえ、今回のような恐怖感はなかったような気がする。

 それは、オレがまだ、おのれを普通の人間と信じて暮らしていた頃だからだろうか?

 

『次の世で、君がどんな姿をしていようと……今と同じように君を愛するだろう』

 

 そうだな。

 おまえは不思議な男だ。

 不実なオレに約束はできなそうだが、もし、オレにも生まれ変わりがあったとしたら、その世界でおまえを見つけよう。

 

 そうだ。

 おまえが言っていたように、『物言わぬ植物』であったとしてさえも、オレはおまえの息吹を感じるだろう。

 

「セフィロス…… どうかしたの?」

 イロケムシに声を掛けられ、ふと気を戻す。

「いや……別に」

「ずいぶんと楽しいことがあったみたいだね。後で聞かせてちょうだいよ」

「……バーカ、秘密だ」

 

 適当にやり過ごし、オレは車に乗り込んだ。

 

 

 終わり