墓 参
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<17>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

「え……? なにか言ったか、セフィロス?」

「いや何でもない」

 オレはそう言った。もうヤツの口から聞くべきことは聞いたのだから。

「そ、それで、君の話の続きは? 君が我々の家に来て……それから?」

「もういい。つまらん話をした」

 ヴィンセントが困惑した面持ちでオレを見る。こいつは周囲の人間の気持ちを思いやるのに、信じがたいほど頭を働かせるのに、殊おのれに対しての事柄にはひどく鈍感だ。

 釈然としない面持ちのヴィンセントに、

「……気にするな」

 と苦笑しつつ、そうつぶやいた。それでごまかそうとしたが、よくよく考えて見れば、オレ一人で納得して、終いにするのは不公平というものだ。

 ヴィンセント相手に、妙なプライドを固持するのも滑稽だろう。

「……さっきも訊ねただろう? 以前からおまえのオレへのこだわりが不思議だったと」

「だ、だから……それは……」

「おまえのオレへのこだわりは、すべてあの女科学者に起因しているのだと思っていた。『ルクレツィア』の息子だからというのが、理由のすべてだと考えていた」

 まっすぐにオレを見つめ返すヴィンセントの目線をかわすために、ゴンドラの窓を眺めた。

「だ、だから、それは、最初は……」

 ヴィンセントは慌ててオレの言葉を訂正しようとする。

「ああ、もういい。聞きたかったことは聞くことができた。そしてそれは……オレの望んだ答えだった」

「セフィロス……」

「おまえは物好きな男だ」

 目の前のヴィンセントに視線を戻し、低くつぶやいた。

 

 闇夜に散った花火が大きな華を咲かせる。

 紅……

 青……

 黄……

 緑……

 そして、オレの髪の色に似たような、銀……

 

 それらは、一瞬大きく花開き、あっという間に散った。

 次の瞬間やってくる、夜の闇。

 

 ヴィンセントの双眸がオレを見つめる。ヤツには氷色のオレの瞳に、自分の姿が映し出されているのが見えるだろう。

 瞳に映った互いの姿が大きくなってゆく。

 

 どちらから……だったのだろうか。

 いつの間にか、オレとヴィンセントの口唇が重なった。

 永久の楽園を巡るゴンドラの中での口づけは、ごく普通の恋人同士のような……おかしな錯覚をオレに起こさせた。

 ようやく終着点についたとき、係員のねぇちゃんに見られたのは不覚を取ったとしか言いようがないわけだが。

 

 

 

 

 

 

 翌朝……

 いや、もう昼過ぎにもなろうかという時刻だ。

 結局、真夜中までアミューズメント施設で、はしゃぎまわっていたオレたちは、仲良く寝坊をしたというわけだった。

 予定では昼前にはゴールドソーサーを発つつもりであったのだが、そいつは大幅にずれ込んだわけであった。

 

「す、すまなかった…… 私まで寝過ごすとは」

 ゴールドソーサーのエントランスでもじもじとヴィンセントが謝罪した。

「オイオイ、『私まで』って言い方だと、オレがメチャクチャ寝汚いみてーだろうがよ。言っとくが、貴様を起こしてやったのはオレなんだぞ」

「あ、も、申し訳ない…… つい……」

「ま、今から出れば夜には着くだろ」

「そ、そうだな。とりあえずは予定どおりだ」

 ヴィンセントはにこりと笑ってそう言った。やはり住み慣れた我が家に帰れるのは嬉しいのだろう。

「セフィロス、楽しかったな。本当になんだか夢のようだった…… 今回のことはずっと忘れない……」

「大げさなヤツだな。来たけりゃ、またそのうち来ればいいだろ」

「ん…… でも、やはり遠いし……なかなか機会はないだろうし……」

「おい、ぼさっとするな。ロープウェイが来たぞ」

 名残惜しげにアミューズメントパークを眺めているヴィンセントを促した。放っておいたらいつまで経っても帰れそうにない。

「ヴィンセント!」

「あ、ああ、すまない。つい……」

「ったく、ガキじゃあるまいし…… ホラ、今回はこいつで我慢しておけ」

 ようやく大人しく後をついてきたヴィンセントに、オレは『記念品』を手渡した。