The beginning of Autumn
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
Interval 〜05〜
 ヤズー
 

 

 

 
 

 

 

 

「ちょっと、ヤズー、聞いてんのッ!? なんで俺が側にくっついてちゃいけないのッ? どうしてセフィならいいんだよッ!」

「……まぁ、落ち着いてよ、兄さん」

 そう宥めておいて、言葉を探す。今、俺が頭の中で考えたこと……それをそのまま説明するわけにはいかない。どう言い方を変えても、兄さんが納得するわけないだろうし、あまりに残酷だと思う。

「……あのね、この前の一件を思い出してよ。それからヴィンセントがよく口にする言葉、とかね」

「なんだよそれ!」

「だからさ。この前の一件……DGの事件。ヴィンセント、ずっとセフィロスに申し訳ないって繰り返してたよね」

 そのときをことを思い起こしつつ、ゆっくりと話した。

「う、うん……」

 兄さんは言葉に詰まったようにぎこちなく頷いた。

「自分の勝手で飛び出したにも関わらず、俺たちが彼を助けに行ったことを、ひどく気に病んでいたよね。そして結果的には、最期の最期まで、ヴィンセントの側で闘ったのはセフィロスだったじゃない」

「そ、それは……!」

「うん、わかってるよ。あのときは敵の攻撃で吹き飛ばされたり、ものすごく戦況が掴みにくかったから。兄さんがヴィンセントの側近くに居れば、きっとずっと彼についていたんだと思うけど」

 それが可能であったかどうかはともかく、そう言っておいて彼の気持ちを慰めてやる。

「でも、やっぱりヴィンセントとしては、セフィロスが親身になって最期まで付いていてくれたって感じるでしょう? しかも普段はアタリのきついセフィロスが、自分のために傷を負ってまで闘ってくれたなら、あの人のいいキャラクターだから、よけいに感謝すると思うんだよ」

「そ、そりゃ……まぁ、俺だって、ヴィンセントのためにあそこまでしてくれたんだから……そういう意味ではセフィに感謝してるけど……」

 不承不承認める兄さん。

 『フフン』と意地悪くセフィロスが笑った。

 

「セフィロスの髪を切らざるを得なかったのも、自分の責任だと思ってすごく落ち込んでいたし」

「髪なんてすぐ伸びるじゃん」

 至極あっさりと兄さんが言い放った。

「うん、っていうか、もう伸び伸び」

「エロイ人は伸びるの早いんだって」

「黙ってろクソガキどもッ!」

 兄さんにつられて、大人しかったカダージュたちまで声を上げるが、すぐさまセフィロスに一喝されてしまう。

 ふぅ……とため息をつくと、こちらを見もせずに、セフィロスは低くつぶやいた。

   

「……バカが……あいつはまだそんなことを気にしているのか?」

「仕方ないよ、彼は君の髪をとても気に入っていたし……憧れていたようだったからね」

「はッ、てめーらも同じギンパツだろ」

「そういうんじゃないでしょ。髪はその象徴のひとつであって……なんていうんだろ、あの大人しくて気弱な人にとって、あなたみたいな人間は憧憬の対象なんだろうよ。大きくて強くて、まぁとりあえずキレイでさ。好き勝手に生きて、まわりの連中を巻き込んでも何とも思わなくて、欲しい物は力づくで手に入れるような、さ」

「なんだと、このヤロウ、ケンカ売ってやがるのか?」

「そうじゃなくて。ああ、話が逸れたかな」

 ひょいと両手を上げて、降参というように、俺は言葉を続けた。

「とにかく、俺たちが納得できようができまいが、ヴィンセントにとって、あなたはアコガレの対象であり、また尊敬の念をも感じ……それから……」

 俺はそこまで口にして言い淀んだ。

 ……まだ確認してはいないことだから。それより先に言及するのははばかられるし、もし……もし万一、俺の思ったとおりだとしても、この場で口にすべきことではないと思ったから。

「ん……まァ、そんなとこじゃない?」

「…………?」

 怪訝そうなセフィロスを置き去りに、オレは言葉を濁した。

「で、でもさ、ヤズー!」

 不満げに口を挟んだのは兄さんだった。

 

「さ、さっきの話……」

「なに?」

「あのさ、確かに……俺、ヴィンセントのこと好きだし……うん、ホント好きだから、無理やり側にくっついていようとして、疲れさせちゃうってのは……その……認めるし……理解できるけどさ。セフィに、やさしくかまってやれって……そんなの無理に決まってんじゃん」

 ブスリとむくれた顔で抗議する。自分が言い出したこととはいえ、兄さんが憤慨するのも理解はできるのだが……

「うーん、まぁ、かまってやれ……っていうのは語弊があるかもしれないけどさ。さっき話したように、ヴィンセントがセフィロスに憧れているってのは、兄さんも気がついているでしょう?」

「ま、まぁ、そりゃ……人間、自分とは正反対のものにアコガレを抱くってのは聞いたことあるし……」

「おい、なんだ、クソガキ。その文句のありそうな目つきは? アアン?」

 ケッとばかりに悪態を吐いて、兄さんを睨み付けるセフィロス。

 ……まったく、ヴィンセントときたら、このイジワルで斜にかまえた男に、そんなにも憧れることはないと思うのだが。正直俺には理解しがたいが、ヴィンセント自身が、まるで不思議の国の住人のような人物だ。やはり惹かれる部分があるのだろう。

 俺はそう納得するようにした。