〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<最終回>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

「ねぇ、ヤズー。これ、ヤズー宛にお手紙、来てたよ?」

「……えぇ? 俺宛って……だって、ここの住所なんて誰にも教えたことはないのに」

 怪訝そうに首をかしげるヤズー。そりゃ、コスタ・デル・ソルのご近所さんなら、ウチの住所くらいは知っているだろうけど、そんな連中はわざわざ手紙なんかよこさないと思う。

「ちょっと見せてみろよ、カダ」

「あ、もう、兄さんってば!」

 さすがに本人の了承なく開封することはできないが、差出人を見る程度は許されるだろう。

 俺は指が切れそうなほど、ピンと角の尖った長封筒を裏返しにした。封の部分には蝋を垂らして印章を押してある。

 ……なんつーか、ずいぶんと高貴な雰囲気の……

 右下に踊る達筆な署名を見たとき、思わず

「……うっ……」

 と声が漏れた。

「なにさ、兄さん? 誰からよ?」

 と、当の本人のヤズー。

「ヤ、ヤズー……これ……」

 思いも寄らない相手だった。いや、よく考えてみれば不思議はないのかもしれないけど……

「はっきりしてよ。ほら、開けちゃって」

 基本的にオープンモードのヤズーはそんなふうに俺を促した。

「……ヤズー、これレオンハルト八世からだよ……」

「え……?」

「な、なに……?」

「誰だ、そいつァ?」

 上から順に、ヤズー、ヴィンセント、セフィロスだ。無神経なセフィは除外してもいい。

「セフィロスは直で会ってないからね。……レオンによく似た皇太子殿だよ」

 そういいながら、ヤズーは俺から手紙を受け取った。

 

『秋麗の候。

貴殿におかれては、傷の具合はいかがであろうか?

ルーファウス神羅社長より、君が諸般事情あって帰郷したとの話を伺った。

おそらく此度の一件による、名誉の負傷が原因であろうと存じ上げる。

貴殿は命を賭して、我々を守ってくれた命の恩人である。その君に直接礼をいう機会さえも与えられず、我が心は悔恨思うことを止まらず、ただ想いを伝えたい一心でのみ、これを記す。

此度の会談が無事に成ったのは、貴殿らの忠心が故のことである。私としては、是非とも君に皇室の内官として出仕して戴きたく愚考を巡らしていたが、貴殿には大切な家族があるとのこと。今は、ただひたすらにこの思いをあきらめるべく自戒するものなり。

だが、その傷が癒えたのならば、是非再び相見え、感謝の言葉を直接に述べたい。

ではまた。気候不順のおり、より一層ご自愛専一のほどに。』

 

「かった〜……」

「カタイね……」

 俺とカダージュは思わず声を揃えてつぶやいた。だが、ヤズーやヴィンセントはそうは思わなかったようだ。

 

「丁寧な御方だ。……光栄だな、ヤズー」

「ふふふ、そうだねェ。なんて言っても皇太子殿下だから。でもね、俺が彼を守ったんじゃない。……彼のほうが俺を守ってくれたんだよ」

 ヤズーはそう言いながら、丁寧に手紙を封筒に戻した。

「彼にとってはひどくショックな出来事だったと思うよ。トラウマになってなきゃいいんだけどね」

 つらそうな面持ちのヤズーに、俺は現場にいた人間として言葉を掛けた。

「でもさ、おまえは連中を守って一人で闘ったんだから。カダたちの時と違って予備知識がなかったんだしな」

「…………」

「むしろ、死人がでなくてラッキーってレベルだよ!」

「ん……ありがと、兄さん」

 完全に納得した様子でもなかったが、一応彼は頷いてくれた。

「皇太子って、なんかあのレオンみてーなヤツか?」

 セフィロスが話に割ってはいる。それなりに興味があるのかもしれない。

「うん、そう。ああ、セフィは直接話したりはしなかったんだっけ」

「ああ、何度か見かけはしたがな」

「いい人だったよ。真面目で誠実で……」

「ほぉ、なるほどな。面白みが無くて、堅くて、童貞でか」

「あっはっはっ! 失敬だぞ、セフィロス。殿下に向かって」

 とジェネシス。見れば彼は手早くキッチンで茶器の準備をしている。

 ……その手際の良さが、なんか悔しい。

「あの手のツラは大抵そんなもんだ」

 あっさりと切り返すと、セフィロスは呼ばれる前にテーブルに着いた。多分小腹が減ったんだと思う。

「でもさぁ、皇室の内官だって。ちょっと揺れちゃうなァ」

「いいんじゃねーのか? 言っておくが玉の輿は無理だぞ。ファーストレディは一応、女がなるもんだからな」

 からかい口調のセフィロスを軽くいなして、ヴィンセントがヤズーの手を取る。

「元気になったら……一度、挨拶に行ってみてもいいかもしれないな、ヤズー」

「ヴィンセントまで、そんな……」

「会いに行くのはかまわない……だが、それが済んだら、やはりこの家に……」

「ああ、もう、ヴィンセントが心配しちゃってるじゃない。ほら、カダもそんな顔しないで。 ……俺はどこにも行かないよ。この家が大好きなんだからね」

「ヤズー……」

 ホッとした表情のヴィンセント。

 一応、彼の特別な人間という自負のある俺的には微妙な心境だ。

 

 俺たちが生まれる前から、ずっと永らえているヴィンセント。そんな彼が、ようやく出来た家族を大切にするのは当然なのかもしれない。

 でも、ま、家族とはいってもね。必要以上に仲良くするコトはないと思うんですがね。

 

「チョコボっ子!みんな、おやつの時間だよ! あ、ヤズーの分は俺が食べさせてあげるよ」

 ……妙に我が家になじんでいるジェネシスに、冷ややかな目線を送るが動じるどころか、微笑みで返される。

 

 俺たちの思い出の場所、ミッドガル。

 つらく忌まわしい記憶もあるが、確かに俺たちはあそこで青春を生きたのだ。

 見るよしもなく破壊されたあの場所が、徐々に神羅の手で復興されつつある。その情景にもっと不快感を覚えるかと思っていた。

 だが、俺が抱いた感慨はそんなものではなかった。

 皇太子殿下、ルーファウス率いる新・神羅カンパニー、そしてWRO。

 ヴィンセントさえ、側に居てくれれば、この星に未練はないが、徐々に息を吹き返すこの世界を愛おしいと感じた。

 これまで憎み続けていた、神羅につらなるものすべてを、許せるような気持ちになった。これは俺の中でものすごい変化だ。

 

「……なんだ、クソガキ。めずらしくも真面目なツラしやがって」

 前に座ったセフィが、マフィンを頬張りながら無遠慮に訊ねてくる。

「ううん、別に。……たださ、今回の一件、引き受けてやってよかったかなって」

「…………」

「ヴィンセントのこと抜かしてもさ。……無駄なシゴトじゃなかったかもって感じたんだよ。ちょっとだけだけどね」

「……同感だな」

 意外な返事に釣られるように、俺は顔を上げた。

 マジマジとセフィロスを見つめるが、彼はいつものように、

『フン』

 と悪態をついて、顔を背けただけだった。

 

終わり