〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<20>
 
 レノ
 

 

 

 

「ハイヨー、二番街の建設現場な。一応、後始末に兵隊行かせるわ。お疲れさん」

 オレは、先ほどから何度も書き付けている書類に『二番街建設現場』と書き加えた。

 そのまま、控えの部隊に現地へ向かわせる支持を出す。

 ちなみに、一般兵ではなく、それなりに訓練を積んだ兵士たちである。そりゃまぁ、ソルジャー並かといわれれば、そこまではいかないが、簡単にやられるレベルではないと考えてもらえればいい。

「…………」

 傍らの椅子に掛けているヴィンセントさんが、内心の焦燥を表に出さぬようこらえているのが気の毒だ。

「ヴィンセントさん、大丈夫ですよ。一番心配だったパレードは無事終了しましたからね」

 なんとか慰めようとしているオレの気持ちを読んでのことなのだろう。彼は弱々しげな微笑を浮かべた。

「ああ、今の電話はウチのほうのヤツからですから。DGとなると雑魚レベルでも手間取りますからね、部隊編成で見回りに当てています」

 オレのその言葉に、ヴィンセントさんはペンを取るとメモ帳に書き付けた。

『神羅の兵士諸君は無事なのだろうか?』

 そんな文章に、笑う場面じゃないのに、思わず苦笑してしまう。

「ええ、大丈夫ですよ。負傷した連中は何人かいますが、重傷者は出ていないッス。もちろん、ヴィンセントさんの家族は皆ピンピンしてますよ」

 オレの言葉に、彼は頷いた。

 本当はこんなところで大人しくしているのはイヤなのだろう。

 自分も彼らとともに動き周り、せめて互いを守り合いたいと考えているんだと思う。オレが彼の立場だったら、絶対にそう感じるはずだから……

 

 

 

 

 

 

「……失敬」

 軽いノックの後、扉が開いて社長が入ってきた。

「レノ、首尾はどうだ?」

「今ンところ問題ないッスね。ご一行は昼の会食でホテルに入っています。そろそろオレもツォンさんと交代しますので」

「そうか」

 一つ頷くと、社長はヴィンセントさんに会釈した。もっとも、彼に見えるかどうかはわからないが。

「……パレードが不安だったがな」

 と言葉を付け加える。

「ええ、オレもッス。十分準備しておいたのがよかったんじゃないスか? あの状況で狙撃すんのは場所取りが相当困難だと思いますからね」

 不思議そうにこちらを伺うヴィンセントさんに説明してやった。

「あのね。近くのホテルとか、パレードのルートが視認出来る場所には、すべて神羅兵を配置してたんですよ。両脇のホテルの滞在者は、すべて神羅ゆかりの者たちッス」

「……そうなのだ。本来、こういった催しは、一般市民をこそ優先したかったのだが、パレードの最中が一番危険性が高かったので」

 ヴィンセントさんが思慮深げに同意を示した。

「ああ、でもね、ちゃんと一般市民が見られる場所を、ちゃんと確保してあるのでその辺は上手くやってますから。ただ異分子が入り込まないように、身分チェックはシビアですけどね」

 

「さて、君……具合はどうだろうか?」

 社長の言葉はもちろん、ヴィンセントさんに対してだった。

 ヴィンセントさんは、それに笑みを浮かべて頷き返した。『心配は要らない』という意味合いだろう。

「……その……おかしなことを言うようだが、君とは以前どこかで会ったことはなかろうか? ああ、いや、すまない、つまらないことを」

 社長はそう問いかけてから、今はそれどころではなかったというように、言葉を閉じた。

「……君らがもっとも気に掛けていた、DGソルジャーの首魁という男の報告はまだ上がっていない」

「…………」

「ああ、ネロっしょ。ですが社長。DGといっても、皆が皆、必ずそのネロとかいう野郎に取り込まれているわけではないぞ、と」

「…………」

「たぶん、別組織で動いている輩もいるだろうし。あの赤ん坊のときだって、まったく別件だったはずッス」

 かつての上層部に利用され、ルーファウス社長血縁の赤ん坊がDGソルジャーに狙われたときのことを口にした。

「そう……そうだな。ヴィンセント・ヴァレンタインくん。私の従兄弟の件では、本当に君たちに迷惑をかけてしまった。レノの報告によると、君がもっとも親身になってくれたと聞いている。ありがとう」

 ヴィンセントさんはそれに『なんでもない』というようにかぶりを振ると、

『あの子が無事でよかった。すこやかに成長することを祈っている』

 とペンを走らせた。

 ルーファウス社長が、あらためて、といった様子で、ヴィンセントさんを見つめた。

 これまでほとんど接点がなかったふたりだ。社長もこの人だけが、あの家の連中と異なる感覚を持っていると感じたのだろう。

「あ……あの子は、私の縁者に預けている。とても元気でいる様子だ」

 ヴィンセントさんはふたたび微笑むとそっと頷いた。

 

 ほどなくして、ツォンさんが、部屋へ入ってきた。

 社長とヴィンセントさんに、軽く会釈すると、オレに『交代の時間だ』と告げた。ツォンさんは、会食の会場を担当していた。つまり、ホテルでの三者会談は何のトラブルもなく終わったということだろう。

 ……クラウドのクソガキが、デザートのおかわりくらいはしかたもしれないが。

「OKッス。それじゃ、行ってくるッス。ウォンさん、指示を急ぎ内容はこっちのレポートに。先にすませちまってください」

「よし。……社長、しばらくこちらに居られますか?」

 過保護なツォンさんは出かけにルーファウス社長に声を掛けていた。

「ああ、そうだな。おまえは、先に済ませる仕事があるのだろう。その間、私が彼の護衛を務めよう」

 やや冗談めかしてそういう社長を残し、オレたちは足早にそれぞれの持ち場へ散った。